抄録
Ⅰ 研究の背景と目的
近年,高齢化や自治体財政の効率化などを背景として,国土交通省はコンパクトシティ政策を推進しており,全国の自治体が都市政策に導入しつつある(国土交通省, 2013).多くの自治体では,複数中心地を結び付けるネットワーク型の都市構造を提示しているが,Danzig & Saaty(1974)が提案したモデルは都心を中心とする同心円状であり,初期にコンパクトシティの概念を都市政策に策定した青森市の一極集中型の都市構造が最も近い(青森市 1999).本研究では,青森市を事例としたシミュレーション分析により,一極集中型コンパクトシティ政策の実効性を明らかにする.
Ⅱ 分析方法
シミュレーション分析では,市街化区域(ミッド・シティ)内への人口集約化について,市街化区域外(アウター・シティ)からの人口移住を仮定した.また,アウター・シティに立地している大規模郊外団地である戸山団地について,バス交通の多頻度化を仮定した.分析では,2010年における中心駅(青森駅)へのアクセシビリティを指標としており,用いたデータは国勢調査1/2地域メッシュの人口・世帯と,青森市営バス時刻表によるバスの運行頻度(休日13~15時台平均)である.なお,空間解析にはArcGIS 10.0 Network Analystを利用した.
Ⅲ 結果
人口移住は,移住割合の上昇に伴ってアクセス可能人口割合が高まり,特に総人口の50%未満や高齢者で改善効果が高かった.公共交通の多頻度化では,バスの運行頻度が5倍までアクセシビリティの改善に効果的であり,人口・世帯属性によって改善傾向に差異が見られた.以上のことから,中長期的に都心周辺への人口移住を進めつつ,政策の実効性を高めるために集約化先をインナー・シティとすることも検討の余地がある.郊外団地への対策は,短期的には団地内の生活関連施設を維持しながら,バス交通による都心への連絡性を高めることが重要である.また,最終的に郊外核として維持することを明確にし,目標とする都市構造に組込むことを検討する必要がある.
参考文献
青森市 1999. 青森市都市計画マスタープラン.
国土交通省 2013. 平成25年度 国土交通白書.
Danzig, B. G. and Saaty, L. T. 1974. Compact city: A plan for a liveable urban environment., W. H. Freeman & Co., San Francisco.