日本地理学会発表要旨集
2016年度日本地理学会春季学術大会
セッションID: 404
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要旨
東京・上野地域における商業集積地の土地利用と空間特性
*太田 慧杉本 興運菊地 俊夫
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抄録

1研究背景と目的 東京都心周辺地域は江戸時代から武家地,寺社地,あるいは町人地として栄え,それらの地域は現在でも東京を代表する主要な商業集積地として発展している地域も少なくない.たとえば,新宿,渋谷,浅草,および神楽坂などは海外の観光ガイドブックであるLonely Planetに紹介されるなど,東京都心周辺地域の観光資源としての潜在的価値は大きい.これらの東京都心周辺地域に位置する東京都台東区上野地域は,博物館や美術館,動物園などの観光施設とともに,アメヤ横丁に代表されるような東京の下町の風情を感じられる商業集積地が隣接している.上野地域ではこれらの要素が混然一体の景観を形成している一方で,商業集積地への観光客の誘致が課題となっている.  そこで本研究では台東区の上野地域を研究対象地域として,東京都心周辺地域における商業集積地の土地利用とその構造的特徴をとらえることを研究の目的とする.これにより,多様な観光資源が隣接する上野地域の特徴をとらえ,2020年の東京オリンピックに向けて観光客のさらなる増加が期待される上野地域の空間特性を明らかにしていく.本研究では,上野地域における商業集積の現状をとらえるために,台東区の資料をもとに街区構成,町会,および商店街の分布図を作成した.さらに,商店街を中心とした商業集積地の空間構成をGISに取り込み,それらの関連について検討した.
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上野地域における街区構成と商店会の分布特性 上野地域は江戸時代から続く市街地であるが,1923年の関東大震災や1945年の東京大空襲で被災し,その街並みは大きく変貌してきた.上野地域における街区構成は第2次世界大戦以前の骨格を基盤としており,現在でも一部の町名にその面影が残っている.現在の上野地域の町名は,他の東京都内の町名と同様に1964年の東京オリンピックの前後に大規模に改変されている.その一方で,上野地域における町会組織や商店街の範囲は従来の地域区分を踏襲しているものが多い.つまり,上野地域の商店街は,現在の行政区分よりも従来からの地域的なつながりを継承している.
3.上野地域における商業集積地の空間構成 2015年現在,上野地域の商業集積地は19の商店街と745の店舗から構成されている.これらの商店街組織は,JR上野駅と御徒町駅の間に位置するもっとも店舗が集積している地域で細分化されている.また,JR山手線の東側では飲食店が多く立地する一方で,西側では様々な業種が混在する傾向にある.さらに,観光施設が集中する上野公園に隣接する大通り沿いでは大型店が立地しており,小地域内において店舗構成に差異がみられた.

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