日本地理学会発表要旨集
2016年度日本地理学会春季学術大会
セッションID: 1003
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要旨
バイカル湖南部セレンゲデルタの元素動態
ミャンガン オルギルボルド*川東 正幸
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抄録

セレンゲ河はバイカル湖への最大の流入河川であり、60%以上の流入水を供給している。源流はモンゴル北部のハンガイ山脈にあり、同国北部地域を北上し、モンゴル・ロシア国境を越えて、ロシア連邦ブリヤート共和国の首都ウランウデを経てバイカル湖に流入する。河口には広大なセレンゲデルタが形成されており、デルタ内の無数の小河川を通じて上流からの懸濁粒子が堆積している。セレンゲデルタの河口付近は湿地になっており、人為的な土地利用は無く、上流に向かって粗放的な放牧と耕作地としての利用がある。さらに上流域には大規模に機械化された農地利用があり、ウランウデより上流では農地利用のほか、露天掘りの炭鉱や発電所が集水域における大規模な土地利用となっている。モンゴル領内では農地での機械化や鉱工業の影響によるセレンゲ河水系への負荷が報告されており、下流に位置するロシア側の土地利用と合わせてバイカル湖水質への影響が懸念されている。しかしながら、バイカル湖水質では顕著な汚染は報告されておらず、セレンゲ河水系での汚染物質の除去や遅延機構の存在が考えられた。すなわち、汚染物質のキャリアとなる粒子がpH、塩濃度、温度、流速などの河川環境の変化に伴って沈降や分散の過程を経て水系からの除去または希釈される過程の存在を仮定できる。それらの河川環境の変化に伴う汚染物質動態の把握は将来さらに進行する土地開発に対する許容量の推定に有効である。そこで、本研究では、バイカル湖に至るセレンゲ河流域内で河川中の元素濃度の分布を把握し、土地利用や河川ネットワークに応じた元素の動態・消長を検討することを目的とした。

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© 2016 公益社団法人 日本地理学会
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