日本地理学会発表要旨集
2016年度日本地理学会春季学術大会
セッションID: S1104
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要旨
ジオデザイン:人口減少時代のまちづくり
*矢野 桂司
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抄録
Iはじめに
2010年頃から欧米のGIS分野において注目を集めているジオデザインGeodesignは、地理学(Geography)+計画学(Design)の造語であるが、その起源は、GISを用いたランドスケーププランニング(Landscape Planning)にある。そして、近年のGISと地理情報科学(GISc)の発展が、以下の点で、これまでの地図の重ね合わせに基づくジオデザインを大きく変えた(Batty 2013)。それらは、1)デザインを支援できる科学的な地理空間情報の膨大な蓄積、2)WebやクラウドのGIS技術による様々な関係者の参加のあり方の変化、3)情報技術のデザインへの浸透、4)ボトムアップ型の仕組の導入、である。 現在、ジオデザインは、「地理学的内容、システム思考、情報技術に基づき行われる影響シミュレーションと提案デザインの創出を強く結びつけたデザインとプランニングの方法論である」(Flaxman 2010; Ervin 2012)と定義され、さらに「新たな解が地理空間技術で引き出された(科学的な)地理空間知識によって影響を受けることによるインタラクティブなデザイン・計画手法」と定義されている(Lee et al. 2014)。
II ジオデザインによる地理学とデザインの連携  
ジオデザインを生み出したCarl Steinitzの近著『ジオデザインのフレームワーク』(スタイニッツ、2014)の第1章「協働の必要性」では、あらゆる、ジオデザインは、以下の6つの問いかけから始まる、とされる。 (1) どのように対象地域は説明されるべきか? (2) どのように対象地域は機能するのか? (3) 現状の対象地域はよく機能しているのか? (4) どのように対象地域は変化するだろうか? (5) 変化によって、どのような違いがもたらされるのか? (6) どのように対象地域は変えられるべきか?  地域は、デザインの専門家、地理学者、情報技術者、地域住民の4者の協働からなるジオデザインによって、変えていく必要がある。Steinitzのジオデザインの最大の特徴は、先の6つの問いかけを地図で表現し、重ね合わせや再分類を含むカルトグラフィック・モデリングというGIS技術を用いる点と、一人がすべてを行うのではなく、地域住民を含めた協働、そしてそれらをコーディネートする能力の重要を説いている点にある。そして、近年のGISとGIScの技術の発展がこの協働を可能にしたというのである。
III 人口減少時代のジオデザイン
国の推計によると、2010年現在、12,806万人の人口は、2040年には10,728万人まで減少するが、その変化は大都市圏と地方で大きく異なることが指摘されている(まち・ひと・しごと創生本部事務局、2015)。 中山間地域などでは、「小さな拠点」の形成(集落生活圏の維持)が推奨され、地域住民による集落生活圏の将来ビジョン(地域デザイン)の策定、ワークショップを通じて住民が主体的に参画・合意形成に関わることがうたわれている(まち・ひと・しごと創生本部事務局、2015)。また、地方都市では、都市のコンパクト化と交通ネットワークの形成が推奨され、いわゆる「コンパクト・シティ」の計画をジオデザインによって策定していく必要がある。その具体的な計画の策定には、前述のジオデザインの6つの問いを、GISを最大限に活用しながら、地理学者、デザイナ、住民に問いかけることになる。  本発表では、人口減少時代の地方のまちづくりを住民参加型ジオデザインの手法でどのように達成可能かを検討する。
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© 2016 公益社団法人 日本地理学会
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