日本地理学会発表要旨集
2016年度日本地理学会春季学術大会
セッションID: 510
会議情報

要旨
都道府県別にみた老衰死と医療費との関係
*北島 晴美
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

1.はじめに
発表者は,最近の都道府県別老衰死の地域差について,標準化死亡比(SMR),年齢調整死亡率,死因別死亡確率から分析し(北島,2015a),保健所別老衰死の地域差についても報告した(北島,2015b)。
都道府県別,性別,5大死因(4大死因+老衰)別のSMR,年齢調整死亡率をそれぞれ主成分分析し,いずれも肺炎,悪性新生物,心疾患の変動を説明する第1成分,老衰,脳血管疾患の変動を主に説明する第2成分が抽出された(北島,2015a)。
全国464保健所をケース,男女の5大死因のSMRを変数とする主成分分析から,保健所別の第1成分,第2成分は,都道府県別SMRの主成分分析結果と類似しており,第2成分は老衰,脳血管疾患の変動を主に説明するパターンである。第1成分は4大死因と関連した死亡率の総合的指標と言える特徴を持ち,老衰死亡率は独自の変動を示すことが示唆された(北島,2015b)。
都道府県別老衰死亡率は,医療費と関連すると考えられる。本研究では,都道府県別老衰SMR,老衰死亡確率と医療費指標との相関関係を調べた。

2.研究方法
使用した老衰死に関するデータは,SMR(『平成20年~平成24年 人口動態保健所・市区町村別統計』,厚生労働省)(2010年と標記),死因別死亡確率(『平成22年都道府県別生命表』,厚生労働省)である。都道府県別の医療費に関するデータは,医療費の地域差分析(平成22年度基礎データ)(厚生労働省)に掲載された,都道府県別1人当たり医療費(後期高齢者医療制度)である。
老衰死の99%以上は75歳以上であるため,後期高齢者医療制度の医療費データとの比較を行った。

3.老衰SMR,老衰死亡確率と1人当たり医療費
2010年の都道府県別,性別老衰SMRと後期高齢者1人当たり医療費は,男女とも有意な負相関である(図1)。1人当たり医療費が高いと,老衰死亡率が低下する相関関係がある(男r=-0.7462 p=0.0000,女r=-0.7497 p=0.0000)。
2010年の都道府県別死因別死亡確率のうち,75歳の性別老衰死亡確率と後期高齢者1人当たり医療費は,男女とも有意な負相関である(図2)。1人当たり医療費が高いと,老衰死亡確率が低下する相関関係がある(男r=-0.6656 p=0.0000,女r=-0.6758 p=0.0000)。

4.老衰死と医療費
老衰死は他の死因による死亡と連動し,他の死因による死亡割合が多いと老衰死の割合は低下する。他の死因による病死の場合の医療費は,老衰死の場合の医療費よりも高額となると想定される状況を反映した相関関係が確認された。

北島晴美2015a:都道府県別老衰死亡率の地域差,日本地理学会発表要旨集,No.87,184.
北島晴美2015b:保健所別老衰SMRの地域差,日本地理学会発表要旨集,No.88,79.
厚生労働省ホームページ.医療費の地域差分析(平成22年度基礎データ).

著者関連情報
© 2016 公益社団法人 日本地理学会
前の記事 次の記事
feedback
Top