日本地理学会発表要旨集
2016年度日本地理学会春季学術大会
セッションID: 1004
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要旨
半乾燥地域における塩湖の水質形成に対する河川と地下水の影響
中央アジア・キルギス:イシククル湖を事例に
*齋藤 圭小寺 浩二前杢 英明濱 侃
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抄録

乾燥地域に多く分布している塩湖は、蒸発による湖水の濃縮によって形成されると一般的に解釈されるが、そのメカニズムは複雑である。塩湖の水質を考えるとき、蒸発散量>降水量の関係から、湖水位が低下すればするほど塩分も高くなると考えがちであるが、実際は河川や地下水にも微量に塩は含まれており、湖水位が上昇していても湖に塩は蓄積される。しかし、流入した塩はそれらが飽和濃度に関係なく、化学的に粘土鉱物への吸着により、あるいは生物によって取り込まれ、それらが湖底に堆積することによって湖水から除塩される(中原ほか, 1999)。そのため、塩分の高低だけでも解釈は単純ではなく、河川及び地下水の流入による物質供給を含めた、水文学的研究が必要とされる。本研究では、半乾燥地域に位置し、一定の河川流入が認められる、イシククル湖を研究対象とし、その水質特性について考察を行った。結果として、イシククル湖への流入水の負荷量は、Na++K+は河川と地下水からの供給によるものであり、Cl-は地下水、SO42-が河川と地下水、Mg2+は河川からの供給による影響が多いことが分かった。また、それらの多くは湖南東部を水源とするものが多い。特に、Cl-は湖南東部に多く分布する温泉水の影響を強く受けており、それらの影響は湖東岸近辺の湧水でも確認することが出来た。また、地下水は、深層地下水が多いことから、湖へ直接流入している可能性も考えられる。イシククル湖に対するSO42-の負荷量は、河川と地下水とで同程度であり、Cl-の負荷量は地下水による割合が高い。湖南部に位置する、クンゲイ山脈を水源とする地点は、これらの化学成分を多く溶存している傾向があることから、天山山脈の存在が、イシククル湖の水質特性を決める上で重要であると考えられる。

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