日本地理学会発表要旨集
2016年度日本地理学会春季学術大会
セッションID: 921
会議情報

要旨
高校生の道に迷う原因と場所のとらえかた
*宮﨑 真和
著者情報
キーワード: 高校生, 地図, 道迷い, 写真
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

1.はじめに 「地図が読めない」という声や,「街にいて,どこにいるか分からない」という声を聞く.その理由としては,高校生までの教育内容で,地図の読み方が見についていないために迷ってしまっていると考える.しかし,高校までの学習内容で,地図を読む経験や,まちを歩く経験をしているはずである.その学習内容が,実際の街で発揮されないのは,高校の学習内容で実践的な内容をおしえていないためだと考える.そのためには,高校までの学習内容において,学習指導要領通り「見知らぬ場所を地図を頼りに歩ける」ようにするために,指導内容を工夫することが必要である. そこで本研究では,実際にルートを自分で設定し,まちを歩くことで,高校生が道に迷う要因が何かについて調査し, その結果から,中高生が道に迷う理由が何かを,地図読みが上手な人と比較し,見知らぬ地域を地図を頼りにして歩く際に注目すべきことは何かについても考察をすることとする.   2.調査方法  今回の調査では,中学段階での地図の学習を終えている高校1年生と,オリエンテーリングを行っている大学生を調査対象とした.調査対象地は横浜市の関内~中華街の間とした.これは,街路に特徴がある場所を選定したためである.調査方法は,まず被験者にスタートとゴールを提示し,その2か所までどのようなコースを歩いていくかを事前に申告していただいたうえで,被験者自身にそのコースを歩いてもらい,目的地まで自分が設定したルート通りに進めるかを調査した.そして,実験が終わった後,スタート地点に戻り,1回目に歩いたコースをもう一度歩き,どのような意図を持ってコースを設定したかについて被験者にインタビュー調査を行い,歩いた時に何に注目して歩いたかを写真に撮ってもらった.使用する地図は,教育で扱うことも踏まえ,国土地理院発行の10000分の1地形図「関内」を使用した.   3.調査結果の概要 調査の結果,ルート通り進むことができる人はルート選択の際,遠くからでも目立つ特徴的な建物,その中でも特に視覚的に判断しやすいものをルート選択の段階でチェックし,実際に歩くときの目印にしていた.道に迷う高校生は,道に迷う人がよくランドマークとする動くものや判別が難しいものではなく,感覚的にわかりやすい看板や門をランドマークとして設定していた.これは,目的地を定めないさまよい行動の際に注目するものと一致しており,これらのランドマークが地図上に表されていないため,現在位置を把握する材料とはならず,結果として道に迷う原因となってしまった. 一方で,迷わなかった高校生やオリエンテーリングを行う大学生は道路に注目するパターンが多かった.今回の被験者も,「地図を見て本数を数えることができる」道路を地図において活用する機会が多く,方位よりも人工物を目標物として扱うことが多いという既往研究を裏付ける結果となった. 道に迷う高校生は他の属性と比べ,迷ったことに気付くまで地図を見ていなかった.このことから,道に迷わないようにするには,細かく現在地を確認することが求められるという道に迷わないポイントが,高校生においても当てはまることが分かった.

著者関連情報
© 2016 公益社団法人 日本地理学会
前の記事 次の記事
feedback
Top