日本地理学会発表要旨集
2016年度日本地理学会春季学術大会
セッションID: P031
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要旨
2014年長野県北部の地震における変位量と変動地形に基づく古地震像の検討
*池田 一貴
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抄録

2014年長野県北部の地震では「ひとまわりちいさな地震」が指摘されている(鈴木ほか,2015など).本研究では本地震で確認されている地表地震断層の変位量に基づき,変動地形との関係から古地震像の検討を行う.
調査方法は,現地で簡易ボーリングおよびピット掘削調査を行い,層相の確認をして段丘の年代を決めた.また,オートレベルによる測量,大縮尺地形図,航空写真測量で変位量分布を明らかにした.
神城断層では堀之内地区でトレンチ調査が行われており,その結果4回(①6738-4862年前,②4130-3625年前,③3060-1873年前,④1538年前以降)の活動を認めている(奥村ほか,1998).また,大出地区では断層の低下側でボーリング調査が行われ,ピート-砂礫互層のピートの下限をイベント直後の堆積物と認定し,過去3回(ⅰ.約1000-1300年前,ⅱ.約500-600年前,ⅲ.約300年前以降)の活動を認めている(杉戸ほか,2015).また,本地域ではおよそ300年前の1714年に小谷村を震源とする地震(正徳小谷地震)が発生し,甚大な被害が記録されている(宇佐美,2008).
大出地区の国道406号の南側に分布するL4面は,構成層中から1714年の地震に対応して離水した可能性を示唆する年代値が得られており,その変位量は約1.6-2.0mである.この結果から本地点における300年前の地震は今回のものよりも変位量が大きい可能性がある.
また,大出北方のL2面(4-5ka)において,奥村ほか(1998)で認められた間隔で活動した場合と,300年に1度活動を繰り返した場合で考えた.変位量は今回と同じで計算すると,現在のL2面の崖の比高に一致しない.よって,300年より長い間隔で今回と同じ変位を繰り返したか,より長い間隔で大規模な地震も含め変位しているかの少なくとも2通りの可能性が示唆できる.
変位量分布についても空白域があるものの,大出においてはL2面もL3面も大きな値を示すことが明らかとなった.

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