抄録
1. はじめに 2015年4月および5月に,ネパールを巨大な地震が 襲った。その被害状況については,多くの研究で解明 されつつある。本研究では,2015年11月上旬から2016 年1月下旬にかけて、被災状況の把握,被災後の地表 面の解析を行うために各種調査を行った。今回,その 結果について速報をする。 2. 調査対象地域および調査方法 一連の巨大地震の震源部に近い集落であるシンガ ティを中心として,ドラカ郡を南北に流れるタマコシ 川に沿って分布する9の集落(ゴンガール,プラノジ ャガット,ジャガット,マンタリ,スリドバン,ボー レ,ジャミュネ,オリタール,シンガティ)を調査対 象とした。 (1)聞き取り調査 職業,収入,農地面積,移住状況,仮設住居に対す る評価,政府が家屋につけたセーフティスティッカー の有無,負傷状況,ハザードマップの認知度の8点の 聞き取りを行った。またハンディGPSを用いて訪問先 の位置情報も記録した。 (2)UAV(ドローン)による計測調査 3. 結果と考察 (1)聞き取り調査 今回,9つの集落全体で140世帯,629人に聞き取り を行った。まず死者負傷者数は,死者は6名,負傷者 は14名であった。調査時点では,140世帯が仮設の住 居(テントなど含む)への移住を強いられており、全 体の90%を占める126世帯にとって仮設住居の環境は 十分ではないことがわかった。さらに,ハザードマッ プの認知度について質問したところ,認知しているの は140軒中1軒と非常に低い結果が得られた。たとえば シンガティでは,急崖直下や低位段丘面上にテントの 仮設住居が密集しており,今後のさらなる被害を防ぐ ためにも計画的なまちづくりが急務となる。 (2) UAV(ドローン)による計測調査 ゴンガールでは,最大高度100 mで自動撮影モード にて700枚を撮影した。タマコシ川に沿って,全長約9 60 mの範囲にて地上解像度約8 cmのオルソフォトが 得られた。シンガティでは機器の不備のため十分な撮 影が出来ず,現在,良好な精度が得られていない状況 にある。 4. 今後 シンガティおよびゴンガールでは,UAV(ドローン) 作成したオルソフォトを基礎データとして,地震直 を用いた現地計測を行った。UAVはDJI Phantom2+Visi onを用い,空撮用カメラにはRICOH GRを用いた。今回, GCP(地上基準点)の設置および計測が困難であった ため,UAV本体に小型GPSロガーを取り付け,カメラ撮 影時間とGPSロガー座標取得時間を同期させることで, GCPの代わりとした。なお,写真測量解析にはAgisoft Photoscanを,画像解析にはArc GISを用いた。 後の地形環境と仮設住宅の位置などの関係性を明ら かにする。またヘクラスモデルによる洪水時の浸水予 測を行い,住宅の立地の危険予測を行う。 本研究は,JICA-JST の J-RAPID プログラムの援助を受け て実施したものである。