日本地理学会発表要旨集
2016年度日本地理学会春季学術大会
セッションID: P095
会議情報

要旨
ジオパークにおける商品開発
ジオツアーの展開ならびにジオパーク関連商品の開発実態
*坂口 豪
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

1.はじめに ジオパークの目的とする活動の一つに地域振興がある。そのため、ジオパークではジオツアーやジオパーク関連商品の開発をするなどして観光客を誘致し、経済的な発展を目指した取り組みが実施されている。ジオパークにおけるジオツアーにはストーリー性を有することが重要視されているが、構築されたストーリーをジオツアーにどのように適用するかといった実際的な課題に答える議論は十分に行われていない。また、ジオツアー以外の地域振興策としてジオ食やジオグッズなどのジオパーク関連商品の開発も多くのジオパークで行われている。しかし、ジオパークにおける商品開発に関する研究例も少なく、商品開発上の課題やより良い商品開発のあり方など議論の余地は十分にある。   2.調査目的 本発表では、従来までのテーマを大きく再編し、新テーマに基づいたジオストーリーを新たに構築した恐竜渓谷ふくい勝山ジオパーク(以下、勝山ジオパーク)を事例に、新たなジオストーリーの特性とジオツアーにストーリー性を取り込むにあたっての課題を論じる。 またジオパークにおける商品開発については、糸魚川ジオパークを事例に、ジオパーク関連商品の開発実態およびそのプロセスを類型化して特徴を導く。   3.方法 勝山ジオパークでは協議会事務局の職員、ジオツアー関係者から新たなジオストーリーの実態やジオツアーの取り組みの現状についてのヒアリングを実施した。 糸魚川ジオパークでは拠点施設のフォッサマグナミュージアムにおいてショップにおいて扱っている商品に関しての実態ならび商品の企画や製造のシステムについてヒアリングを行なった。また、観光協会と商工会議所へもヒアリングを実施した。   4.ジオストーリーの構築とジオツアーの展開 勝山ジオパークでは恐竜、火山、人びとの暮らしの3テーマが設けられていたが、ストーリーとして相互のつながりが薄いことが課題であった。そのため、恐竜の生きていたとされる中生代を勝山ジオパークのストーリーの出発点として再編したテーマとジオストーリーを構築した。ジオツアーに関しては2015年度より、ジオツーリズムのための新たなプラットホーム構築事業として勝山市の山間地で活性化に取り組む住民団体とともにジオツアーを実施している。自然体験の豊富なプログラムのため参加者の評価は高いが、ジオツアーというにはジオストーリーの視点の取り込みが薄いという課題がある。   5.ジオパーク関連商品の開発実態とプロセス 日本の各ジオパークでは地域振興策の一環として特産品や食などが地域性を反映した産物としてジオパークのストーリーと関連づけて販売促進を行っている事例が多い。しかし、各ジオパークともジオパーク関連商品の開発や展開手法に悩まされている。その中で、糸魚川ジオパークは日本で最初に世界ジオパークになり、活動実績の蓄積も多い。他のジオパーク関係者が糸魚川ジオパークに視察に訪れる例もある。そこで糸魚川ジオパークにおけるジオパーク関連商品や食などの展開とそのプロセスを明らかにした。その結果、従来から糸魚川で販売されていた商品にジオパークのロゴを付けるなどして再編したもの、ジオパークをきっかけに新たに企画して政策したものなど様々な展開方法がみられた。

著者関連情報
© 2016 公益社団法人 日本地理学会
前の記事 次の記事
feedback
Top