日本地理学会発表要旨集
2017年度日本地理学会秋季学術大会
セッションID: P029
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発表要旨
角海部落の土地機能に関する研究
*茗荷 傑
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抄録

土地の機能とは土地の有用性である。そして有用性は有為転変するという特徴を持つ。土地の機能とは何によってきめられ、何によって遷移するものであろうか。茗荷(2014)では谷中村の機能喪失に至る新しい視点を掘り起こし、考察した。
今回取り上げる角海には戦乱の世に故郷を捨てた記憶が残っていたのだろうか。角海の人は昔から耕作に経済基盤を置かず知識や技術を身に着け、若いうちは都会へ出て老後を角海で過ごす、そういうライフスタイルを続けてきた。原発計画をきっかけとして角海浜の終焉は始まっていくのであるが角海浜村の土地機能の状況は他の地域と事情を異にしている。
もともと土地に何の価値も見出していなかったのに原発計画が持ち上がり、一夜にして莫大な富に変化したのである。そうと決まれば貰えるものは貰って身についた知識や技術とともに次の土地を探して去っていくだけである。その生き方はあたかも国を失ったユダヤの民のようである。
角海浜のある西蒲原一帯はかつては日本有数の貧農地帯であり、まともに作物の取れる土地ではなかった。石高制の経済下ではこのような土地は何の価値も生み出さないととらえられるのであろうが彼らにとっては価値がないところが価値であったのだ。だからこそ目立った諍いもなく見知らぬ土地に入り込むことができたとも考えられる。昭和49年7月、最後の一家が離村し、角海浜は廃村となった。土地に対する思い入れやこだわりが希薄な角海の人にとって角海浜は単なる通過点の一つにすぎなかったのである。生産性をまるで持たない角海浜はそういった人のために用意されていたかのような土地であった。 角海浜から人がいなくなることで角海浜はそれまでの機能を失った。 廃村から40年余り。部落は人が入る前の姿にもどりつつある。
ここでは 原発計画廃止が及ぼした影響に触れながら土地の機能について考察する。

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