抄録
1.浅間山北麓ジオパークの地域概要 群馬県吾妻郡嬬恋村吾妻川右岸域と長野原町全域をエリアとする浅間山北麓ジオパークは2016年9月に日本ジオパークに認定された。それまでの経緯を簡単にまとめる。2011年にジオパーク研究会が嬬恋村で発足した。その後、勉強会、研修会、他ジオパーク視察などを10回以上実施し、また住民ワークショップも複数回行った後、2014年3月に嬬恋村ジオパーク推進協議会を設立した。並行して隣接する長野原町を含めた活動を展開し、2015年3月に2町村での浅間山ジオパーク構想推進協議会を設立した。翌年2016年4月に日本ジオパーク委員会へ加盟申請書を提出し、5月にプレゼンテーション、8月に現地審査を経て、9月に加盟認定された。 2.ジオパーク申請前のかかわり 発表者は2016年4月に浅間山ジオパーク構想推進協議会事務局に着任した。しかし、発表者は2016年4月以前の大学院生の時から浅間山ジオパークへの活動に関わってきた。具体的には2015年10月から月1-2回ほどジオパーク構想エリアに通いながら、運営委員会や専門委員会への参加、またジオパーク関東大会時のポスター制作の一部に関わってきた。それらの活動時には、発言の機会があれば地理学視点に基づいた活動やジオストーリーについての視点について提案させてもらった。 2016年4月に着任してからは、すぐに申請書の最終確認と修正作業に携わった。申請書には、地質的な内容に偏ることなく、動植物や歴史文化的な内容も十分に扱われており、地理学的なジオストーリーが構築されていたので、大きな修正提案などはする必要がなかった。地理専門員の立場からは地図データの凡例やスケールなどの微修正を担った。 3.ジオパーク申請中のかかわり 4月の申請書の提出以降は、5月にある幕張での認定審査プレゼンテーションの準備が主な業務となった。そのパワーポイントづくりや発表内容・原稿の作成に関わった。浅間山北麓ジオパークのテーマの「火山による集落の破壊と再生のストーリー性」を前面に押し出した資料を作成した。その背景に発表者は大学院生の時にジオストーリーの構築を主な研究課題とした経緯があり、プレゼンテーションにおいても浅間山北麓ジオパークのジオストーリーを伝えることを強調したい思いがあった。現地審査においては、ジオパーク推進活動のこれまでの軌跡をスライドにまとめるなどし、審査員に活動の厚みを知ってもらうことに尽力した。また、日本ジオパーク委員会委員とも情報交換をし、より良いジオパーク運営へとつなげる活動も心掛けた。 4.ジオパーク認定とその後のかかわり 9月に日本ジオパークへと無事に認定された。しかし、日本ジオパーク委員会からは多くの改善点の指摘があり、その中にはテーマやストーリーの再考に関する事項もあった。また浅間山北麓ジオパークとして地道の足場を固めることも指摘された。発表者は、協議会の広報・観光を扱う委員会の担当者をしており、ジオパーク通信の作成などの観点から「ジオパークのストーリー性」や人こそがジオパークに欠かせない視点であることを発信している。