日本地理学会発表要旨集
2017年度日本地理学会秋季学術大会
セッションID: S503
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発表要旨
福井県鯖江市における「バス乗客リアルタイムオープンデータシステム」の事例紹介
*葛城 友香廣瀬 典和
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抄録
 コーポレートフェローシップという,Code for Japanが行っている,自治体の課題解決に向けて企業の人材を派遣・マッチングする事業がある.Code for Japanは,市民が主体となって自分たちの街の課題を技術で解決するコミュニティ作り支援や,自治体への民間人材派遣などの事業に取り組む非営利団体である.2016年度下期は福井県鯖江市を含め8市町村に11人が派遣され,それぞれの自治体で成果を上げた.これは,その事業で福井県鯖江市に2016年11月から2017年1月まで派遣された際に「ITやオープンデータを使った公共交通(バス)の利便性の向上」という課題を解決するために取り組んだ成果である.
鯖江市ではつつじバスという福祉バスが1998年から運行している.市内の路線バス廃止などもあり,2001年よりコミュニティバスとして新たなスタートを切った.2012年にはつつじバスに関連するデータの公開を始めた.WebAPIやWebサービス(バスどこサービス)やアプリ(つつじっこ+)でリアルタイムにバスの位置などを確認することができる.利用者の利便性を高めてきたが,2013年をピークに乗客数は減少傾向にあるが, 2017年4月にすべての路線で時刻の変更,路線の追加と大規模な改正を行った.
前述のように,つつじバスの乗客数は減少傾向にある.改正後も乗降客数の統計を元に分析を行い,路線や時刻表の改善が求められている.しかし乗降客数の集計は,今まで運転手が紙の表に乗降客数をメモし,それを市役所職員が1ヶ月分をまとめてExcelに手入力していた.つつじバスを管理している鯖江市総合交通課への聞き取りでも,乗客数を自動でカウントしたいという声が大きかった.これにより,運転手の労力軽減,役所職員の集計事務軽減,利用者の実態のリアルタイムの把握ができ効率的な運行ができるとしている. そこで,運転手が乗降客数をカウントできる装置を作成した. 乗客の乗車時と降車時に属性(一般,各種無料など)ごとにボタンを押して,カウントできるものである.ボタンを押すとIchigoJamとさくら通信モジュールによって,サーバに乗降客のデータが送られる.そのデータはWebAPIで取得することができるため,リアルタイムでバスごとの乗客数などを把握することができる.前述のつつじバスに関連するデータと合わせて,バスの位置とその乗降客数をリアルタイムにWeb上に表示することができた.また,乗降客数の統計情報も容易にcsvファイルで取得することができるようにした.
3ヶ月の派遣期間に,装置やWebAPI,統計ツールの試作版の作成と実証実験を行った.その後,地域版IoT推進ラボに選定された「鯖江市IoT推進ラボ」 のメンバーによりシステム開発・構築を行い,前述の2017年4月の改正時に運用が開始された.
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© 2017 公益社団法人 日本地理学会
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