日本地理学会発表要旨集
2017年度日本地理学会春季学術大会
セッションID: 721
会議情報

発表要旨
新しくなった地理情報分析支援システム「MANDARA10」の特徴
*谷 謙二
著者情報
キーワード: MANDARA, GIS, ソフト開発
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

1.はじめに
筆者は,1993年以来25年にわたってGISソフトである地理情報分析支援システム「MANDARA」(谷 2011)の開発・公開を続けてきた。現在では日本国内において、地理学などの研究、教育、行政、ビジネスなど多方面で活用されている。当初はNECのPC-9801専用で、MS-DOS上のN88-BASICで動作していたが、1996年にはVisual Basic4.0を用いたWindows95版に移行し、さらに1999年にWindows98に対応したVisual Basic6.0(以下VB6)にプログラムを移行した。
2000年以降は、時間属性の付加(2002年)緯度経度の地図ファイルへの対応(2007年) 、集成オブジェクトの作成(2008年)等、様々な機能を追加してきたが、開発言語はVB6のままであった。しかしMicrosoftは2002年からより汎用性のある.Net Frameworkを利用し、オブジェクト指向言語であるVisual Basic .NET(2002,2003,2005,2010,2013,2015、以下VB.NET)へと移行した。VB6とVB.NETは互換性が小さく、また当初は使い勝手が悪かったため、プログラムの移行はとどめていた。しかしVB2005以降は改良により使いやすくなり、またVB6の統合開発環境がWindows7以降サポートされなくなり、開発の継続が困難となってきた(ただしVB6で開発されたソフトはWindows10でも動作する)。
そこで2013年10月より、VB6版MANDARA9.45を、VB.NET版MANDARA10(以下10)へと移行する作業を開始した。長期にわたり機能を追加してきたVB6版は、プログラム構造が複雑化しており、今後の拡張のためには一から作り直す必要もあった。移行作業開始から3年後の2016年11月にMANDARA10試作版を公開した。本ソフトはWindows PC上で動作し、.Net Framework4.5以上が必要である。本報告では10の特徴と新機能を紹介する。

2.MANDARA10の特徴
VB6版では、地図データを保持する変数、および属性データを保持する変数がどちらもモジュールレベルでグローバル変数として宣言されており、1つの地図データ、1つの属性データしか同時に処理できなかった。しかし10ではそれぞれのクラスに分離され、同時に複数のデータを扱うことができるようになった。たとえば従来MAPタグでは1つの地図ファイルしか指定できなかったが、10では複数の地図ファイルを指定し、レイヤごとに地図ファイルを使い分けることができる。
地図データの構造については、VB6版でもオブジェクトの構成要素に時間属性を付与し、時間による変化を保持できた。10ではさらに初期属性に対しても時間属性を付与できるようになり、時間的変化を完全に記録できるようになった。
点形状オブジェクト、メッシュオブジェクトについては、VB6版では地図ファイルにオブジェクトを作成する必要があった。10では、MANDARAタグにおいてレイヤの種類を地点定義レイヤ、メッシュレイヤと指定することで、地図ファイルにオブジェクトを作成する手間を省いてデータを読み込み、地図化することができる。このように最短の手順で目的とする主題図を描画できるよう、改善がなされた。
データの表示方法では、単独表示モードにおいて棒の高さで数値を示す方法や文字で示す方法を追加し、グラフ表示モードでは、設定データ項目の最大数の制限をなくした。また設定画面ではグラフィカルなアイコンを使用し、表現方法を選択しやすくした。
移動表示モードでは、VB6版では滞在地点の指定に地図ファイル中のオブジェクトを使う必要があったが、10では緯度経度指定できるようになった。そのため、GPSの軌跡ログを記録したGPXファイルからデータを直接取り込むことができるようになり、より幅広く活用できるようになった。
このように機能は大幅に拡張されているが、VB6版で作成した地図ファイルや属性データファイルも大部分そのまま読み込めるので、VB6版から10への移行は容易である。ダウンロードおよび質問・意見はWebサイトで受け付けている(http://ktgis.net/mandara/)。

文献
谷 謙二 2011.『フリーGISソフトMANDARAパーフェクトマスター』古今書院.

著者関連情報
© 2017 公益社団法人 日本地理学会
前の記事 次の記事
feedback
Top