抄録
群馬県嬬恋村は,高冷地の特性を活かした夏秋キャベツの大産地である。2014年における夏秋キャベツの収穫量の全国シェアは50.7%を占め,出荷量シェアも51.8%となっており,2位の長野県を大きく引き離して,大産地を形成している。高冷地野菜の大規模産地には,嬬恋村のほか,長野県の上田市菅平や川上村などがある。菅平ではハクサイ,キャベツ,レタスなどを栽培してきたが,農地をラグビー場に転換する農家が現れ,川上村はレタスの産地として知られるが,労働力の不足を要因として,他の作物へ転換する農家が現れている。そうした中,嬬恋村はキャベツの作付面積を増やし続け,一大産地としての地位を揺るぎないものとしている。農村空間の商品化の重要な形態は農産物供給であるので、その事例として、本研究は,嬬恋村の規模拡大と一大産地としての地位の持続の要因を明らかにする。