日本地理学会発表要旨集
2017年度日本地理学会春季学術大会
セッションID: P063
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発表要旨
鳥取県における日本梨栽培の変化
*市南 文一
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抄録

梨の栽培面積や収穫量は,千葉,茨城,栃木,福島,長野県で多いが,西日本では鳥取県の多さが顕著である.本研究の目的は,21世紀を中心にして鳥取県における日本梨の栽培の変化を明らかにすることであり,多様化に伴う変化の実情を説明し,その課題を検討する.鳥取県における日本梨の収穫量は,1970年代前半まではほぼ順調に増加したが,1970年代後半から1980年代にかけては収穫量が多いとはいえ停滞期であった.1980年代後半以降は,栽培農家戸数の減少,老木化や黒斑病の発生などにより減少傾向が続いてきた.1990年代中頃の収穫量は最盛期の半分程度であり,2013年の収穫量は約5分の1に減少した.
第1図は,2000年における日本梨の市町村別栽培面積を描いている。栽培面積は鳥取県中部(倉吉市,東郷町,東伯町,赤碕町,中山町等)や鳥取県東部(郡家町,青谷町,佐治村,河原町,八東町等)で多い.栽培面積はほとんどの市町村で著しく減少してきた.しかし.東郷町における栽培面積は1985年より増加し,佐治村での栽培面積の減少は少なかった.鳥取県の梨の代名詞は「二十世紀梨」であり,栽培面積,販売量,販売金額のいずれも梨全体の約9割の比率を長らく占めてきた.
第2図は鳥取県の主要な中生青梨の栽培面積を示している.二十世紀梨の栽培面積は2005年(695.6ha)まで増加していたが,その後は2009年まで半減した.黒班病に強い「ゴールド二十世紀」の栽培面積も2003年から2013年にかけて約6割減少した.自家受粉ができる「おさ二十世紀」が開発され,自家受粉ができて黒斑病に強い「おさゴールド」の栽培面積が少しずつ増加してきた.鳥取大学農学部は「二十世紀」と「幸水」を交配させて早生赤梨の「秋栄」を育成し,その栽培面積は少しずつ増加している.また,「新甘泉」は,鳥取県園芸試験場が極早生の赤梨である「築水」と「おさ二十世紀」を交配して育成した早生赤梨品種で,8月下旬から9月上旬に収穫され,栽培面積が増加している.二十世紀梨は鳥取県で生産される主要な梨であるが,赤梨を含めて新品種の栽培面積が増加し,梨栽培の内容が徐々に変化している.

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