日本地理学会発表要旨集
2017年度日本地理学会春季学術大会
セッションID: P058
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発表要旨
干ばつ下における農牧民の食糧確保と資産保有
―ナミビア北中部Afoti村を事例に―
*庄子 元藤岡 悠一郎ハンゴ ヴィストリーナ
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抄録

1.はじめに  ナミビア共和国(以下,ナミビア)はアフリカ南西部に位置する乾燥帯の国である.ナミビア中・南部は白人が大規模な私有農地において商業牧畜を経営している一方で,北部ではオヴァンボなどの民族が,主食であるトウジンビエを中心とする農業と牧畜業を組み合わせて暮らしており,自給的な農牧業地域となっている.ナミビアは農耕の乾燥限界であるが,2013年から連続して干ばつが発生し,農牧業に甚大な被害をもたらしている.本研究は,ナミビア北部において,干ばつの連続的発生という危機的な気象災害に対し,農牧民がどのようにして食糧を確保し,また,どのようにして資産を保有しているのかについて明らかにする. 2.方法  調査対象であるAfoti村(以下,A村)は,ナミビア北部に位置し,北部の中心都市であるOshakati市からは直線距離にして約45㎞離れている.  本研究の調査は,A村の38世帯を対象に実施し,2014年10月~11月に世帯構成や収入に関する聞き取り調査を,2016年12月~2017年1月に干ばつの被害状況と対応についての聞き取り調査を行った. 3.結果と考察 1)トウジンビエの収穫量と貯蔵量  干ばつによる被害はA村でも確認され,世帯の多くが2015年,2016年ともに十分な収量のトウジンビエを確保できていなかった.一方,トウジンビエの貯蔵量については,2013年から貯蔵していないという世帯もあるものの,多くの世帯では消費量ほど貯蔵量が減少しておらず,年間の世帯消費量以上を蓄えている世帯も多くみられた。 2)干ばつ下における食糧確保  A村において,食糧を確保する最も重要な手段として認識されているものは,「政府による干ばつ支援」であり,年間100㎏前後のトウモロコシ粉が供給されていた.これに次いで重要と認識されている手段は「購入」であり,トウモロコシ粉や米などが購入された.また,購入資金において最も大きい割合を占めているのが年金であった.したがって,A村では,政府からの物的および金銭的な支援によって食糧を確保している. 3)物々交換(oshasha)による資産保有  A村では干ばつによって死ぬ家畜が増加していた。このうち大部分の牛は小分され,村内に居住する世帯と,トウジンビエに物々交換された.こうして得られたトウジンビエは,食糧として消費されるだけではなく,その一部は貯蔵されている.したがって,物々交換は食糧確保とともに,干ばつによって死んだ牛という資産を,トウジンビエという形態に変えて保有するという役割も果たしている.   付記 本研究は,地球規模課題対応国際科学技術協力(JST/JICA)「半乾燥地の水環境保全を目指した洪水-干ばつ対応農法の提案(代表 飯嶋盛雄)の一環として行った。

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