日本地理学会発表要旨集
2017年度日本地理学会春季学術大会
セッションID: P070
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発表要旨
巨艦店出店場所における過去の土地利用状況
*駒木 伸比古
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抄録

1.研究背景と目的
990年代に進められた大型店出店の規制緩和は店舗の大型化と複合化をもたらした。その結果,郊外へのショッピングセンターの立地が多くみられるようになった。そのなかでも,複数の核店舗と専門店街,映画館などのアミューズメント施設を併設した「巨艦店」は,地域経済および生活行動に対し,広範囲にわたって大きな影響を与えてきた。ところで,こうした巨艦店は郊外における農地や工場跡地,高速道路インターチェンジ付近のような場所に多く出店するとされてきた。しかしながら出店場所における過去の土地利用状況を対象とした研究は管見の限りみられない。こうした出店場所の過去の土地利用状況の傾向を具体的に示すことは,巨艦店の出店行動や土地利用政策との関連について考察する際の指標になると考えられる。そこで本発表では,2000年年代以降に出店した巨艦店の出店場所における過去の土地利用状況の特徴を明らかにすることを目的とする。

2.分析手法
まず,大規模小売店舗立地法に基づき出店届出のあった店舗のうち,合計店舗面積が10,000m2以上のものを「巨艦店」としてリストアップし,アドレスマッチングにより緯度経度を取得した。次に,国土地理院「地理院地図」の空中写真・衛星写真データを利用して,出店場所の土地利用状況を判読した。その際の対象年次は,データが全国的に提供されている1974~1978年(一部1979~1983年)とした。

3.分析結果―九州地方の事例
図は,九州地方における2000~2015年度にかけて出店届出のあった全88件の巨艦店を対象とし,出店場所における1970年代の土地利用状況を示したものである。最も多かったのが農地であり37件(42.0%),次に工場が多く18件(20.5%),続いて海域12件(13.6%)となり,上位3種で約8割を占める結果となった。農地については圃場整備などによって区画整理された農地がバイパス道路などの開通によって転用されたケース,工場については移転や閉鎖によって未利用地となった区画を利用したケース,そして海域については埋め立てなどの港湾整備に基づいて生成された区画を利用したケースであると考えられる。また県による土地利用傾向の違いも見られ,たとえば佐賀県のようにすべてが農地であったケースや,沖縄県のように半数が海域であったケースが認められた。このように,出店場所における過去の土地利用状況を分析することで,巨艦店の出店動向を都市化・市街化や地域の開発状況,経済状況,都市政策動向などと関連付けて把握することが可能である。発表当日は,九州地方以外の他地域における状況や現在の都市計画区域・用途地域の指定状況,人口動態などとの関係もふまえながら,分析結果について報告する。

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