日本地理学会発表要旨集
2017年度日本地理学会春季学術大会
セッションID: P051
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発表要旨
浅間山周辺地域の水環境に関する研究(2)
*猪狩 彬寛小寺 浩二浅見 和希
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キーワード: 浅間山, 火山, 噴火, 水環境, 硫黄
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抄録
Ⅰ はじめに
   当研究室では高山湖沼や活火山周辺域における水環境の研究を行っている。特に2014年に噴火した御嶽山を中心に、2015年6月16日午前に小規模噴火が観測された浅間山でも継続調査を行っている。浅間山周辺の水質を把握し、地域特性を明らかにすることで、水環境形成の要因を考察することを試みた。調査は2015年6月から2016年10月までの毎月と同年12月及び2017年2月の計19回行っており、現在も継続中であるが、約2年間の結果を整理し、報告する。

Ⅱ 研究方法
   2015年6月から2016年10月までの毎月と同年12月および2017年2月の計19回の調査を実施した。調査対象は浅間山周辺の河川や雨水の全47地点である。現地調査項目はAT, WT, pH, RpH, EC等である。また水のサンプルを研究室に持ち帰り、ろ過を済ませたのちTOCおよび主要溶存成分の分析を実施した。

Ⅲ 結果と考察
1.河川(北麓)
   湯尻川や泉沢周辺では重炭酸カルシウム(Ca-HCO3)型の水質が分布し、水温・EC値共に周辺に比べ低いことが確認された。pHは7.0~7.5前後の地点が多いが、その変動は泉沢周辺で大きく、季節ごとの人為的影響が強く出ている。ECは湯尻川や泉沢で100µS/cm前後だが、東の地域では地点間の変動が激しく、高羽根沢と地蔵川で200µS/cm、小滝沢と濁沢で300µS/cmを超え、特に片蓋川では平均値が500µS/cmを超えている。

2.河川(南麓)
   地点による水質の差が北麓に比べ顕著であった。EC値の大きい地点では、ナトリウムイオン、マグネシウムイオンなどの陽イオン、重炭酸イオンや硫酸イオンなどの陰イオンの比率が大きくなり、濃度も高く、pH・EC値共に高い傾向にある。湯川や蛇堀川では同一水系でも地点によって各測定結果に大きな差が表れた。

3.降水
   山体の東側に位置する六里ヶ原および鬼押出し園の降水は、西側に位置する降水と比べpHが低くEC値が大きくなる傾向が見られた。東西でこの傾向が入れ替わる場合もあり、風向および風速の影響が示唆された。

Ⅳ おわりに
   規模が小さかったこともあり、噴火による水環境の変化はほとんど現れなかったが、浅間山南斜面を流下する濁水や北麓の夏季に異常に低い水温を示す地点など、浅間山周辺河川の特色がつかめてきたと同時に、2年間の水質の変動についてもある程度把握することができた。今後も調査を継続するとともに、今まで調査できていない上流域の調査を行ないたい。

参 考 文 献
   鈴木秀和・田瀬則雄(2007):浅間山北麓における湧水温の形成機構と地域特性, 日本水文科学会誌, 37(1), 9-20
   鈴木秀和・田瀬則雄(2010):浅間火山の湧水の水質形成における火山ガスの影響と地下水流動特性-硫黄同位体比を用いた検討-, 日本水文科学会誌, 40(4), 149-162
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