抄録
北アルプス北東部に位置する白馬大雪渓は日本三大雪渓の一つで,夏季には毎年1万人以上の登山者が通過する日本屈指の登山ルートである.白馬大雪渓上では岩壁の落石や崩落で生産される岩屑により毎年のように登山事故が起こっている.2005年8月に杓子岳北面の岩壁で崩落が生じ, 2名の死傷者がでた.2008年8月には大雪渓の左岸斜面で崩落が発生し,登山者2名が犠牲になっている(苅谷ほか,2008).また,白馬大雪渓での落石事故は,1992~2013年で起きた滑落事故を除く登山事故件数が日本の山地で最多である.本研究では,落石・崩落の実態や大雪渓周辺の地形変化を明らかにすることを目的として,2014~2016年に現地調査を実施した.