日本地理学会発表要旨集
2017年度日本地理学会春季学術大会
セッションID: 433
会議情報

発表要旨
新潟県西部西頸城丘陵沿岸地域における後期更新世以降の地殻変動
*米原 和哉
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録
1.はじめに:新潟県西部の西頸城丘陵の沿岸には,数段の海成・河成段丘面が分布するが(高浜,1980),それらの広域示標テフラに基づく対比・編年や離水年代に関してはほとんど研究が無く確定していない現状である.また西頸城丘陵は,高田平野西縁断層帯の隆起側に位置するばかりではなく,丘陵内には日本海から続く海岸に直交する褶曲構造が分布し(赤羽,1988),丘陵全体が短縮変形を受けながら隆起していると考えられる.本研究では後期更新世から完新世における西頸城丘陵沿岸に分布する海成段丘面の対比・編年を行い,その旧汀線高度分布の傾向から後期更新世以降における西頸城丘陵の地殻変動を明らかにすることを目的とする. 2.研究方法:西頸城丘陵が分布する上越市から糸魚川までの東西約40kmにわたる空中写真判読から段丘面を区分対比し,現地調査にて,段丘構成層,被覆層の観察,クリプトテフラ分析を行うとともにRTK-GNSSを用いて段丘面の旧汀線高度を計測した. 3.段丘面の対比と編年:本地域に分布する段丘面をH面,M(1~3)面,L(1~2)面に区分した.H面は,形成年代に関する資料は得られていないが海進性の厚い堆積物が見られたことや,構成層の風化の度合いからMIS7またはMIS9の段丘面である可能性がある.M1面の海成段丘は厚い海成堆積物がみられ,段丘構成層上部約30cmにK-Tz(9.5ka)が産出することからMIS5eに対比した.M3面は段丘構成層上部約40cmにDKP(5.5ka)が産出することからMIS5aまたは5cに対比した.L1面ではテフラによる年代試料は得られていないが,ボーリングデータで厚い   海進性堆積物が見られたことからMIS1の高海面期に対比 した. 4.旧汀線高度分布:M1面は名立鳥ヶ首周辺で最も高度が 高くなり約90mである.東方の有間川右岸にかけて高度を 減じ,高田平野付近の汀線高度は約25mであった.平野部に向けて西から東へ高度を減ずる傾向がある.M3面も同様の傾向が見て取れ,名立鳥ヶ首付近で最も高く約45m,平野北方で約10mである.L1面,L2面はそれぞれ約5~10m,1~2mに分布し地域に高度の明瞭な違いは見られないが名立鳥ヶ首周辺では平均高度が若干高く上位の段丘面の高度の傾向と調和的である. 5.西頸城丘陵の隆起速度:段丘形成年代と段丘面の旧汀線高度の分布から,平均隆起速度はM1面,M3面それぞれ0.72~0.2m/ka,0.8~0.4m/kaの値が得られた.隆起速度は鳥ヶ首周辺で最も大きくなっており,それらは西頸城丘陵の隆起運動が名立鳥ヶ首周辺で相対的に大きくなることを示している. 6.西頸城丘陵の地殻変動:本地域に分布する海成段丘の旧汀線高度は新第三系の背斜軸周辺で高く,向斜軸周辺で低くなっており,褶曲構造との対応がみられる.今後,このような隆起運動の特徴を解明していくとともに,テフラ資料,段丘の区分などに関してより詳細な調査が必要である. 引用文献 赤羽貞幸・加藤碩一,1988,高田西部地域の地質,地域地質研究報告 5万分の1地質図幅 新潟(7)第60号. 高浜信行,1980,北部フォッサ・マグナ能生海岸の段丘形成史と鬼舞地すべりの発達史,新潟大災害研究報,第2号.
著者関連情報
© 2017 公益社団法人 日本地理学会
前の記事 次の記事
feedback
Top