日本地理学会発表要旨集
2017年度日本地理学会春季学術大会
セッションID: 737
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発表要旨
小型ROVを用いた水中3D地図の作成
*田林 雄小室 隆
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抄録

1. はじめに   計測技術や解析技術の発達した今日においても、湖沼や河川、浅海域等の水の中の地図化は陸面に比べて遅れている。その理由として、測量をする際に、水の中の作業に際して移動の自由が制限されるため陸面に比べて非常に手間がかかること、機器の高い防水性能が求められることが挙げられる。こうした場の地図化は物質循環の重要な場であり精細な地図の作成は正確な物質の移動量・蓄積量の見積もりに繋がる。  
地図を作成する手法として写真測量があるが、従来は写真から地図を起こすのには専門的な知識や経験が必要であった。しかし、最近では対象を異なる視点から連続的に撮影したデジタル写真を用いて、3Dモデルや3D地図を作成するソフトウェア技術が発達し、特段の専門性がなくともこうしたもののデータ化が可能になった。
また、水中で連続写真を撮影する際には対象物を適切な視点から撮影する必要があるが、従来の遠隔操作型無人潜水機(ROV; Remotely Operated Vehicle)は100kgを超えるような大きいものが多く、外洋以外での取り回しが困難であった。また、浅瀬での航行・潜行は不可能であった。しかし、最近バッテリーや電子パーツの性能向上によって小型のROVが開発された。価格も個人の研究者が購入・運用できる程度である。
本研究では、このソフトウェアと小型ROVを用いて現地で撮影したデジタル写真を用いて、既述したソフトウェアで解析することで湖沼や浅海底の水中3D地図の作成を試みた。

2. 調査・解析  調査は2016年5月に神奈川県の三浦半島の海岸部で、同年の10月に群馬県の菅沼で行った。いずれの地点も波浪の影響が小さく、透明度が高い。小型ROVに搭載したカメラで対象範囲の連続写真を撮影し、取得した写真を計算機で解析した。

3. 結果・課題  今回調査を行なった地域では撮影条件がよく明瞭な3D地図の作成ができた(図)。特に、礫の形状や色を含めて精細に再現できている。また、音波探査等では得られないテクスチャを取得できるのが特長である。しかし、一方で以下の課題が明らかになってきている。今後は今回の手法が適用できる地域を明らかにしたり、課題を克服する手法を考えたい。

課題
・水面近くでは機体が波浪の影響を受ける
・水中を潜行させた場合に機体の位置確認が難しい
・水草などで動きのある対象物のモデル化は困難
・対象範囲を抜けがないように連続撮影することが困難で、しばしば「す」ができてしまう
・モデル化が透明度に大きく依存する
・モデル化が光環境に依存する
・詳細なモデル計算には時間がかかる

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