日本地理学会発表要旨集
2017年度日本地理学会春季学術大会
セッションID: P022
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発表要旨
変質したサンゴ化石の年代推定に向けて
*高田 将志
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抄録

1.はじめに:隆起サンゴ礁のU-Th年代は、海水準変動や地殻 変動の解明に多大な貢献をもたらしてきた.しかしながら、U-Th法が適用できない変質したサンゴ化石も少なくない.そのような試料しか得られない地域の隆起サンゴ礁の年代は、14C年代測定が適用可能な完新世~後期更新世の隆起サンゴ礁段丘の年代から隆起速度を仮定して推測したり、テフロクロノロジーなど他の第四紀学的情報から推測することになる。しかしながら、テクトニックにアクティブな沖縄トラフの陸側に連なる日本の南西諸島のような場合、島々に分布するサンゴ礁段丘は、陸域の活断層によって分断・ブロック化され、相対高度など地形学的な推定がむずかしい場合や、他の直接的な第四紀学的情報に乏しい場合も少なくない。<BR>
  一方、南西諸島には中国大陸からのレスが飛来しているという報告がある(たとえば、矢崎・大山、1979)。筆者は、レスがサンゴ化石中に取り込まれていれば、この粒子の光ルミネッセンス年代を測定することで、前述したような変質した隆起サンゴ礁の形成年代を間接的に推定できるのではないかと考えている。そこでまず、南西諸島の中でも変質していない隆起サンゴ礁の分布する島を対象に、U-Th年代既知の試料について、サンゴ化石中に取り込まれている無機鉱物粒子を抽出し、pIRIR法による年代推定が可能かどうか、また、可能であればU-Th年代や第四紀地史と整合的な年代値を示すのかどうかの検証を行いたいと考えている。今回は、与那国島から得られた試料を対象に、上記について検討した結果について報告する。<BR>
2.研究対象試料と研究手法:今回報告する年代測定試料は、南西諸島与那国島の隆起サンゴ礁から採取した。与那国島は、喜界島と並び、隆起サンゴ礁の年代がある程度系統的に明らかにされている島で、U-Th法によって最終間氷期(MIS5)に形成されたと考えられるサンゴ化石とMIS7に形成されたと考えられるサンゴ化石が識別されている。本報告では、既存研究によりこれらの年代が特定されている層準から試料を採取した。<BR>
  採取したサンゴ化石は、暗室の赤色光下で、まず、岩石カッターと6N塩酸10分間以上のエッチングにより、表面5mm以上を取り除いた。その後、試料を蒸留水で洗浄後、再度、過酸化水素を加えた6N塩酸で炭酸カルシウムを完全に溶解させた。この試料処理によって生じた少量の残渣を集め、沈降法と蒸留水による洗浄を繰り返し、粒径2~10ミクロンの無機微粒子を抽出した(図1)。そして、この粒子を用いて、pIR-IRSL年代測定(Buylaert et al., 2012)を試みた。当日のポスターでは、化学分析やガンマ線計測などから求めた年間線量評価と合わせて、暫定的におこなった年代測定結果について報告する。<BR>
References<BR>
 [1] 矢崎清貫・大山 桂(1979):宮古島北部地域の地質,地域地質研究報告5万分の1図幅,地質調査所、46p.<BR>
 [2]  Buylaert, J. P., Jain, M., Murray, A. S., Thomsen, K. J., Thiel, C. and Sohbati, R., 2012. A robust feldspar luminescence dating method for Middle and Late Pleistocene sediments. Boreas 41, 435-451.

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