日本地理学会発表要旨集
2017年度日本地理学会春季学術大会
セッションID: P007
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発表要旨
函館大火後の都市計画と現在の景観を結び付けた防災学習の提案
高等学校地理の身近な地域調査を事例として
*森 康平
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抄録

今日の防災教育の題材では、地震や気象災害などが多く取り扱われている。しかし、火災に関しては避難訓練を除くと教科における取り組みは少ないと思われる。火災は、地震災害の二次災害として発生する火災を除いては、大規模な被害が出る大火は近年少なくなっている。だが、昨年末には新潟県糸魚川市において大火が発生し大きな被害を及ぼした。この様に、防火教育も土砂災害や津波災害などの地震に付随しておこる災害と同様に防災教育で取り扱う必要があると考える。そこで、本発表では、高等学校地理の身近な地域調査の学習を対象として、近代に函館市で発生した大火後の復興計画と、現在の都市計画及び景観を関連付けた防災学習教材を提案する。大火と都市計画を関連させることにより、災害に強い町づくりの形成について学習することができる。

学習指導案の特徴は3つある。一つ目は、導入の場面において、生徒にとって大火災害を想像しやすくするために、都市計画と景観を結び付けた。二つ目は、函館大火と被災後の都市計画を結び付けることである。三つ目は、1934年(昭和9年)に発生した函館大火の史料を活用して、当時の都市計画の失敗例を学習した上で、今後大火災害が発生した場合にどのような対応をとるべきかを考えさせる。
 
資料に関する工夫では、大火以前の都市計画を取り上げ、現在の避難行動を考えることは、災害から身を守る方法以外にも、地域の課題を解決する方法や災害の地域特性を把握することに有効であると考える。

今後の課題は、函館大火と他地域で発生した大火の被害を比較させる教材を作成することにより、生徒が災害の地域性を確認することができるようになると考える。

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