日本地理学会発表要旨集
2017年度日本地理学会春季学術大会
セッションID: P066
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発表要旨
ジオデザインによる京都府与謝野町の将来計画
*谷端 郷矢野 桂司中谷 友樹花岡 和聖
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抄録

I はじめに  
人口減少時代を迎えた日本における持続可能で体系的な地方創生のための計画手法の1つとして、GISを活用したジオデザイン(スタイニッツ、2014)を提案する。ジオデザインとは、地域の記述や説明に重点をおく地理学と地域の将来計画を得意とする計画学とを融合し、GISとICTを最大限に活用して、地域住民と専門家の協働によって将来計画を立案するために提案されたフレームワークである。 本研究は、人口減少・高齢化が進行する典型的な地方自治体の1つである京都府与謝野町を対象に、ジオデザインの方法論と先端的な情報プラットフォームの適用を試みた2日間のワークショップ(2016年11月23・24日、立命館大学朱雀キャンパス)の成果内容を報告するものである。
II ジオデザインのフレームワークと対象地域  
ジオデザインは、基本的に図1に示す6つの問いかけの繰り返しに基づいて構成される。
与謝野町は、平成の大合併の2006年に、旧岩滝町、旧野田川町、旧加悦町の3町が合併してできた町である(図2)。大江山連峰をはじめとする山並みに抱かれ、野田川流域には肥沃な平野が広がり、天橋立を望む阿蘇海へと続く総面積108平方キロメートルの範囲に約2万4千人が暮らしており、南北約20キロメートルの間に集落が連なっている(与謝野町HPより)。与謝野町は丹後ちりめんで知られる絹織物の生産地としても知られるが、高度成長期以降、繊維産業は衰退し、人口流出による人口減少が続いている。
Ⅲ ワークショップの内容
ワークショップは、参加者がWebを介してジオデザインに参加できる情報プラットフォームGeodesign Hub(https://www.geodesignhub.com/)を用いて進行した。本ワークショップの目的は、2010年(人口2万3千人、世帯数9千人、高齢者比率30%)の与謝野町をベースとして、30年後にあたる2040年の将来計画(推計人口1万5千人、世帯数6千人、高齢者比率42%)を策定することにある。まず、将来計画のベースとして、住宅、商業地、工場、農地、公共施設、グリーン・インフラ、ツーリズム、ランドスケープといった9つの視点を設け、対象地域を(Feasible、Suitable、Capable、Not Appropriate、Existing)の5段階にランクづけする評価マップをGISの空間分析機能を利用し作成した(10mメッシュの空間的解像度を採用)。将来計画では、新たな住宅、商業地、工場、農地、公共施設、グリーン・インフラ、ツーリズム、ランドスケープに関係する土地利用・施設の配置・規制を計画した。その際、合併前の3つの旧町のコミュニティを代表する3つの計画チームと、環境保全、経済、社会の視点から合併後の与謝野町全体の将来を考える3つの計画チームのそれぞれが将来計画案を提示した。最後の意思決定モデルの段階では、それら6つの将来計画案を与謝野町の利害関係者を含めた討論を経て比較し、最終的に1つの将来計画へと統合した。
参考文献
カール・スタイニッツ著、石川幹子・矢野桂司編訳(2014):『ジオデザインのフレームワーク:デザインで環境を変革する』古今書院、226頁。
付記 本研究は、立命館大学の2016年度国際化情報発信および歴史都市防災研究所の研究高度化予算の助成を受けた。

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© 2017 公益社団法人 日本地理学会
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