本研究は避難訓練時の移動軌跡データをリアルタイムで収集し、災害情報と合わせた可視化を行う避難訓練システムを開発することを目的とし、その利活用法の検討を行う。研究方法は、まず避難訓練参加者の多機能端末にインストールする位置情報収集アプリと、位置情報及び災害情報を格納し可視化するWebアプリケーションからなる避難訓練システムを開発する。大学生39人を対象とし、疑似津波集団避難訓練を行う。訓練後に津波浸水データと移動軌跡データを利用した振り返り学習を行い、システム運用結果及び事前事後それぞれのアンケート結果から、システムの利活用法の検討を行う。研究対象地域は北海道釧路市とした。釧路市は市街地の大部分が津波浸水エリアに指定されており、また浸水開始までの時間が35分と短いことが特徴として挙げられる。
システムを運用した結果、位置情報の収集及び可視化に関しては概ね良好であった。位置情報を正確に測位するまでの時間には、端末ごとにタイムラグが生じたものの、実験開始時には誤差5メートル程度で収集でき、リアルタイムでサーバーに格納された。避難訓練者に対するフィードバック学習では、事前に格納されていた津波浸水データと合わせて可視化し、その結果を訓練参加者に提示することができ、参加者の訓練結果に対する意識を変化させるなどの効果があることが明らかとなった。