抄録
人間の生存には糖質と、たんぱく質・脂質など必須の栄養素の摂取が必須である。世界の人類集団はそれら栄養素を持つ食材を同所的に生産(獲得)し、加工・調理してきた。これを「食のパッケージ」と呼ぶ。モンスーンアジアに典型的な食のパッケージは水田稲作と淡水漁撈による「米と魚」という形をとる。また欧州の畑では人間の食料とともに家畜の飼料が栽培されてきた(「ムギとミルク」のパッケージ)。食のグローバル化は、食材の大量生産と長距離輸送を促進してこれらのパッケージを壊しつつあるが、このことが食料生産に使うエネルギーを過大にしてきた。ここでは伝統的な食のパッケージと風土の相互関係について考える。