日本地理学会発表要旨集
2018年度日本地理学会秋季学術大会
セッションID: 614
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発表要旨
複合的環境変化の理解における質的分析の重要性
*チャクラバルティー アビック
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抄録
これまで環境変化に関した研究の多くは「自然科学」的方法を用いた定量分析のもとに行われてきた。その主な目的は環境変化の「程度」を図ることであり、そのために適切な変数を定めた上での分析であった。しかし現在我々は「人新世」という新たな地質年代に生きていることもよく指摘され、環境変化の理解には、単なる「程度」でなく、変化の「本質」を理解する必要があると言える。一方、質的(定性)分析は主に社会学的研究の方法として捉えられ、「人間」に焦点を当てた分析のために使われてきた。このように定量・定性分析を区別することは、新たな地質年代における環境変化の本質への理解を妨げる原因になり、両方を併せた総合的研究が求められている。特に、これまで自然科学や環境学の分野において十分に使われてなかった定性分析の可能性を探求する必要があると言えよう。
本発表では、山岳地域における複雑な自然環境変化に焦点を当て、定量分析だけでその本質を十分に明瞭化できないことを議論する。また、山岳地域の景観や自然環境の成り立ちを説明するために、自然環境のほぼすべての側面において内在する人為的影響(改変)を踏まえた分析が必要であろうという論点を、国内外の山岳地域の複数の事例を通じて、提唱する。
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© 2018 公益社団法人 日本地理学会
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