日本地理学会発表要旨集
2018年度日本地理学会秋季学術大会
セッションID: P105
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発表要旨
過疎地域における生活支援サービスの供給状況の空間的偏り
ー山梨県北杜市須玉町を事例にー
*吉田 真
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抄録

1はじめに

 高齢化率は,とりわけ過疎地域において高い.現在,過疎地域を含んでいる自治体数の約半数に当たる817は,面積では国土の6割近くを占めている(総務省,2018).

 過疎地域における住民の生活行動は,世帯構成,居住環境,交通事情等の種々の空間的な制約下に置かれている.このような事情から過疎地域では生活サービスを供給する側が住民側に出向き,支援するケースがみられる.そのため,住民の生活行動は生活サービスを供給する自治体や,企業,商人の対応によって特徴づけられている.

近年では高齢者の介護予防を目標とした国の施策の一部として生活支援サービスが供給される事例がみられる. 一方,現実には人材不足等を理由としたサービス供給の限界や空間的な偏りがみられる.そこで本研究では山梨県北杜市須玉町を対象に生活支援サービスの供給状況の空間的差異とそれをもたらした要因を明らかにすることを目的とする.

2.研究対象地域の概要

北杜市は甲府盆地の北西部に位置しており,かつて峡北地域に存在した7町村の合併により誕生し,その後1町が編入して現在の市域となった.北杜市はこれら旧8町村を行政区に指定しており,そのうち須玉町,白洲町,武川町の3地区は過疎地域に指定されている.中でも須玉町は後期高齢者の割合が23%と地区の中で最も高い(2015年現在).

北杜市は2010年度に「日常生活圏域ニーズ調査」のモデル事業に選定され,この事業を活用して高齢者の外出や交流が少ないといった市独自の課題を明らかにした.北杜市はこれらの課題に対して,関係主体と協力しながら,多様な通い場づくりやボランティア団体の活動等を促進してきた.また,介護予防・日常生活支援総合事業(以下,総合事業)においては,全国に先駆けて,2012年度から北杜市の地域包括支援センターが開始しており,高齢者の生活支援や介護予防に取り組んできた.2015年度からの国の総合事業が開始されたが,その開始と同時に北杜市は直ちに移行して,移行を義務付けられている他の自治体のための先進事例地として厚生労働省の資料に掲載された(厚生労働省,2016).

3.分析手法

 まず,国勢調査の5次メッシュ人口データ250mを使用して高齢者を含む世帯の分布を地図化した.次に,病院や買い物施設といった生活関連施設の位置をプロットし,交通ネットワーク分析を用いて到達圏を画定した.最後に,生活支援サービスの位置やルートの到達圏を描写して,重ね合わせ分析を行った.

4.結論・考察

分析の結果,生活支援サービスの供給状況には空間的偏りが生じていることがわかった.また生活支援サービスが十分に供給されていない地域を明らかとなり,潜在的なニーズを抱えている地域の存在が見出された.

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