抄録
近年,日本では外国人観光客の増加により,インバウンド観光市場の発展が経済成長に重要な役割を果たすことが広く認知されてきた.一方,観光立国をはじめとした国策のもとで観光経済に目を向ける地方自治体も増えつつある.日本の観光市場の既存研究は記述統計手法やビッグデータの分析が多く,市区町村単位のように比較的ミクロな空間単位を用いた観光行動の空間パターンに関する研究は少ない.
そこで本研究は,日本の代表的な観光地の1つである北海道地区を対象地域とし,空間統計手法を用いて外国人観光宿泊客の国籍別・季節別空間パターンを分析した.2010-2016年度の市町村月別・国別訪日外国人宿泊者数(延べ人数)データを用いて分析した結果,特定の国や特定の季節に特異な空間パターンが存在することが明らかになった.特に中国・台湾・韓国などの国からの観光客は文化的観光資源を好み,欧米諸国からの観光客は自然的観光資源を好む結果が確認された.