抄録
次期学習指導要領で必修科目として設置される「地理総合」の授業を念頭に、アクティブ・ラーニング型の地誌の授業を行った。文部科学省は、生徒が主体的に学び、対話を通して深い学びを行うことを求めているが、現場の教員の抵抗感は強い。専門外の教員が担当することも踏まえ、形骸化させないためにも、まずは使いやすく応用の効く教材を作ることが必要である考える。
対象を高校3年生の地理A、「オーストラリアの地誌」とし、位置情報を持った主題図をタブレットコンピューター上で自由に閲覧できる「デジタル地図帳」システムを使って生徒が地図上の情報を大きな白地図の上に描き写して情報の関連性を述べる授業を行った。既存の教科書や資料集の地図に加え、オーストラリアの公的機関が公開している地図や、地図上に展開された写真やグラフを閲覧し、集団で検討しながら作業をすることで、通常の講義式の授業よりも意欲的に洞察する学習を行うことができた。
教師の指示に合わせて紙媒体で確認する形の資料活用から、より多くの資料を生徒が主体的に選び、組み合わせて発表する形は、「アクティブ・ラーニング」的な学習ができたといえるが、教材準備の煩雑さや専門的な技術が必要な点で、教材の汎用性には課題が残っている。今後、教材の製作者や教育団体等が分担して、二次利用を前提とした地図や写真資料の作成や公開を進めて行くことが求められる。