日本地理学会発表要旨集
2018年度日本地理学会春季学術大会
セッションID: S501
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発表要旨
若者×観光×地理学
大都市の若者にみるオルタナティブな観光・レジャーの可能性
*杉本 興運飯塚 遼池田 真利子磯野 巧太田 慧
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抄録
シンポジウムの背景と目的 若者の観光需要喚起が将来の観光産業の維持・発展において重要視されている現在、若者による観光・レジャーの動向を社会情勢や若者文化をふまえて深く検討すべき時にきている。本シンポジウムでは、若者の文化発信や交流の拠点が多く存在する大都市・東京に焦点をあて、そこを中心に展開する若者の観光・レジャーの行動や空間の特性を明らかにする。また、若者の目線を通してオルタナティブな都市型観光・レジャーの可能性を探る。

 観光庁の若者旅行振興研究会によると,若者にとって旅は目的ではなく,「何か」をするための手段になりつつあるという。そのため,若者を引き付けるコンテンツの開発や見せ方が若者観光振興のための一つの鍵であるとも述べている。大都市・東京は主に都市住民にとっての日帰り観光・レジャーの空間としての性格が強いものの,若者の好むコンテンツが多く集積し,彼らの観光・レジャーにおける重要な消費や交流の空間という特性を兼ねている。そのため,大都市・東京を中心とした若者による観光・レジャーの解明によって,若者観光の振興に資する多くのヒントを得られるのではないかと期待される。

シンポジウムの内容 本シンポジウムは、地理学や観光学などを専門とする若手研究者によって組織された若者の観光・レジャー研究に関するプロジェクトの活動の一環である。また、2017年7月に地理空間学会で開催したシンポジウム「大都市における若者の観光・レジャーの行動と空間」の続編として位置づけられ、そこでの未発表分の研究を中心に今回のプログラムが構成されている。プログラムは、大きく若者の観光・レジャーの全体像を扱うものと、個別テーマごとの実態を扱うものがある。

 若者の観光・レジャーの全体像を扱う研究として、若者の観光・レジャーにおける目的地選択や種類別の観光・レジャーの活動実施状況を明らかするもの、若者からみた東京大都市圏内部にある代表的観光地の目的地としてのイメージや魅力を明らかにするもの、若者によるSNSの利用実態やSNSを使った観光情報受発信の実態を明らかにするものの3件が発表される。これらを通して、東京大都市圏における若者の観光・レジャーの一般的傾向や、その訪問先となる様々な地域の特性を明らかにする。

 そして、個別テーマに特化した研究として、若者による観光事業参加としての観光ボランティアガイドの実態を明らかにするもの、若者のアニメに関連した観光・レジャーの実施状況やそれに関する店舗や聖地の分布特性を明らかにするもの、若者に最近人気の出だしたクラフトビールとそれに関係するイベントの開催状況から若者による都市型フードツーリズムの性質を検討するもの、最近の都市政策で注目される夜間経済に関連して若者によるナイトライフ観光の実態や可能性を明らかにするものがある。

 最後に、これらの研究成果から、若者特有の観光・レジャーの特性や、若者が観光・レジャー市場にもつ役割や可能性について議論する。
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© 2018 公益社団法人 日本地理学会
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