主催: 公益社団法人 日本地理学会
会議名: 2019年度日本地理学会秋季学術大会
開催日: 2019/09/21 - 2019/09/23
日本最大の閉塞湖である摩周湖は,北海道東部に位置し,約7,000年前の摩周火山の噴火によって陥没したカルデラ凹地に水がたまって形成された湖である。本湖では,1917年より透明度が観測され始め,1931年には41.6mが報告されており,現在でも平均的に20〜30mと高い透明度が観測されている。また,摩周湖では,水収支解析として湖水位の計測が行われ,長期にわたる調査の結果,約5年で1.4m程の水位低下が認められた一方,2017年には,一転して異常な水位上昇が認められ高水位期間が長く続いた。本湖では,湖水水位上昇量は湖面積と流域面積の比が小さいため,降水量に影響受け,湖水位低下の主な要因は,本地域が寒冷な気候であることから湖面蒸発によるものではなく,流域外へと浸透していることが考えられる。また,流出河川がない閉塞湖で,その周辺の山麓では,約20 ヶ所程度の湧水が確認されており,その起源の一部には摩周湖の湖水からの浸透水の混入が考えられるものもあり,水位変動量が大きい近年の結果を踏まえると,湧出量への影響についても解明する必要がある。そこで,本研究では,揮発性有機化合物などを指標として,摩周湖およびその周辺の湧水の滞留時間について考察する。