主催: 公益社団法人 日本地理学会
会議名: 2019年度日本地理学会秋季学術大会
開催日: 2019/09/21 - 2019/09/23
目的:これまでの気候認識研究は,自国や世界に対するものがほとんどで,他の国・地域に対する認識の系統的な差異は明確ではない.本研究では,中国における大学生の日本・中国の気候に対する関心と情報取得の関係を捉える.
方法:対象者は,日本への留学生数が最大(2017年度:107260人)の中国(首都北京)における大学生(CS:228人),日本人留学生(JFS:29人)である.専門は,日本への留学経験者が多い日本語学科および人文社会・自然科学と日本語以外の言語の大学生とした.アンケートは,2018年10月上旬~11月下旬に実施した.内容は,日本・中国に対する①社会や気候に関する関心,②情報取得媒体,③気候について関心のある場所などについて問うた.質問①・②は5段階評価,③については自由記述による回答方法を設定した.①で得られた日本・中国に対する関心の変量に対してクラスター分析を施し類型化した.
結果:日本および中国に対する関心程度は,4つに類型化された.すなわち,両国の人文社会要素(1~3,11~13)で最上位得点(5点)割合が大きく,日本の気候など気候自然要素(4~10)は中位得点(3点)割合が大きいⅠ型,中国の人文社会要素および気候自然要素(11~20)に対して最上位得点割合が全類型中最大で,日本に対してもそれら(1~10)の最上位得点割合が大きいⅡ型,中国に対しては人文社会要素および気候自然要素とも最上位得点割合は大きいが,日本に対してはいずれも下位および最下位得点(2点および1点)割合が大きいⅢ型,両国の全体(2・12)に対して最上位得点割合が大きく両国の気候自然要素(4~10・14~20)に対しては下位および最下位得点割合が大きいⅣ型である.日本人留学生は言語(1・11)に対する最上位得点割合が大きく,両国の気候関連(5~10・15~20)に対してはⅠ型と同様で中位得点割合が大きい(図1).両国の人文社会と気候自然要素で最上位得点割合が大きいⅡ型は,日本への渡航経験割合が最大で(43.2%),情報源は両要素でテレビおよびインターネット,ほかの手段も多用している.一方,Ⅰ,Ⅲ,Ⅳ型では,両要素でインターネットが情報源の主体である.日本の気候に対して関心がある場所は,中国人大学生全体では北海道や沖縄,大都市で(図2),Ⅱ型および日本人留学生では大都市の割合は小さい.関心理由は,Ⅰ・Ⅲ・Ⅳ型で,大都市である割合が,Ⅱ型や日本人留学生は,自然の魅力である割合が大きい.関心がある地域やその理由は,日本および中国に対して共通しており,したがって社会要因のみに規定されない自然の魅力判断,多様な情報取得は,自国以外についても関心をもつ要素や地域の多様性に関わっている.