日本婦人科腫瘍学会雑誌
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Print ISSN : 1347-8559
症例報告
上皮性卵巣腫瘍を背景に発生したと思われる閉経後卵黄嚢腫瘍の一例
島 英里西野 幸治谷地田 希黒澤 めぐみ田村 亮安達 聡介吉原 弘祐磯部 真倫関根 正幸梅津 哉榎本 隆之
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2023 年 41 巻 2 号 p. 242-249

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抄録

卵黄嚢腫瘍(YST)は稀に閉経後にも発生し,多くは上皮性腫瘍と混在し,組織学的に類似した明細胞癌との鑑別も重要となる.今回,組織学的診断に苦慮した症例を経験したため報告する.

症例は67歳,突然の腹痛を伴う15 cm大の多房性卵巣腫瘍で一部に充実部分を認め,血性腹水の出現とAFP,CA125,CA19-9の上昇を伴うことから,卵巣悪性腫瘍の破裂と診断して,緊急手術を行った.IC2期のYSTと診断し,速やかにBEP療法を開始し,1サイクル終了時にはAFPが陰性化した.閉経後のYSTであり,上皮性腫瘍由来の可能性を考慮して再検討を行った.腫瘍の主体となる粘液性腫瘍にはCDX2,p53が陽性で腸型粘液産生を認め,YSTを認めた充実部分では,AFP,SALL4,CDX2,p53が陽性でCK7,EMA,ARID1Aが陰性という所見であり,体細胞を起源として発生したYSTと診断した.BEP療法による重篤な骨髄抑制が出現し,2サイクル目以降はレジメンをTC療法に変更して治療を行い,術後17カ月時点において無再発で経過中である.

近年,閉経後YSTは体細胞腫瘍が発生由来とされており,本症例も免疫組織化学の結果からsomatic YSTであることが推察された.閉経後のYSTでは,上皮性腫瘍との関連性を考慮した診断ならびに治療法選択が必要である.

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© 2023 日本婦人科腫瘍学会
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