抄録
・目的 神社の野外寄進物には鳥居、狛犬、灯篭、社号標などがある。これらには寄進者の名称、居住地、寄進年代などが刻まれている場合が多く、文化的遺産である。加賀一の宮である白山比咩神社の野外寄進物については既に報告した(府和2018)。本稿は加賀二の宮であり、別表神社である菅生石部神社と、延喜式内社で加賀北部大野郷の総社であり、別表神社である大野湊神社について、野外寄進物の性格を明らかにすることを目的とする。
・方法 市町村史・神社史等による文献調査と現地調査による。現地調査は野外寄進物を社号標、鳥居、灯篭、狛犬、歌碑・句碑、その他に分け、寄進者の個人名・団体名、居住地、寄進年代などを記録する。2018年7月現在の調査結果を考察対象とする。
・結果 二社の共通点は、白山比咩社に比べ、江戸時代の野外寄進物が存在することである。また、寄進者神では地元の商人、北前船関係者が多い。1990年代以降は、野外寄進物の寄進が少ない。相違点は菅生石部神社では狛犬と動物像が大型、小型ともに多いことである。大野湊神社は海上安全関連の大型灯篭が多い。神社寄進物の性格に神社立地地域が関連しているとみられる。調査対象神社と地域の拡大が課題である。
参考文献 府和正一郎.2018.「白山市白山比咩神社の野外寄進物」
2018年人文地理学会大会研究発表要旨:88-89.