抄録
1.はじめに:研究背景と目的
近年,ビザの緩和などの原因により,外国人観光客数と消費額が急増し,インバウンド需要が高まっている.また,国別外国人旅行者行動特性調査によると,新宿周辺は,最も外国人訪問者数が多い場所として挙げられる.この新宿周辺のターミナルである新宿駅に着目し,インバウンド観光の実態調査及び分析をする.
2.研究対象地域
本研究では、研究対象地域として新宿東口を中心に周辺地域を設定した.東京の副都心新宿に位置する新宿駅の東口や東南口、新宿三丁目駅周辺を対象とする地域で,大ゲート東交差点、新宿三丁目北交差点、新宿四丁目南交差点と新宿駅南口交差点より,明治通り、靖国通りの道路を堺として研究対象地域を選定した.研究対象地域は、JR線と京王線、小田急線、地下鉄副都心線、丸ノ内線、都営新宿線の多くの路線が含まれる結節点である.この地域は、世界有数の乗降客数と外国人観光客訪問者数が集中している.研究対象地域に設定される理由としてインバウンド観光により街路景観変化が著しく変化されている.
3.研究方法
研究方法として以下の方法を用いる.GISを用いて新宿東口周辺地域における業種を調査し,ベースマップを作成する.
現地調査には,建物1階の業種、建物の外観と外国人観光客向けの標識、決済方法、免税サービスの利用状況等について,現地調査を行い,対象地域におけるインバウンド観光の現状を明らかにする.現時点では,外国人観光客の主体である中国人観光客について調査を行なう.
4.分析結果
対象地域内全建物の種類を判明し,建物ごとの業種の分布図は、地面1階の業種を示すものになる.現時点で作成した分布図を判読し,飲食店や洋品店には集中する傾向がある.
まず,中国人観光客向けのサービスを把握する上で分類する.免税サービスについて,建物外部に設置する免税表示の実態を図に示す.現地調査により,免税看板には中国語、英語や韓国語表記があり,言語数と表記言語の詳細について現状図を作成し,分析を行う.免税の表示は主要街路に沿って分布し,中国語を含む免税表示が多数設置した.免税不可の店舗を除く,新宿通り沿いの商業施設に免税表示が多数分布している.家電製品、衣料品、消耗品などを販売する店舗が免税店であることが分かった.
次に,決済方法に関するマップは主に中国人観光客が利用する銀聯カード(クレジット機能付もあり)と電子マネー(アリペイやWeChat Payなど)の利用現状を解析した.決済方法を示す看板の有無について分布図を作成し,分析を行った結果銀聯カード利用可能の表示が多く設置され,利用者が多い.一方,電子マネーの利用は普及段階であることが分かった.
さらに,中国人観光客向けの免税サービスや決済方法などの観光客が利用するサービスと対象地域に立地する店舗の業種について関連性の分析を行う.
このような実態を踏まえ,新宿駅周辺地域を訪問する外国人観光客を国籍、地域別に団体旅客と個別手配旅客が行い行動によってどのような観光を行っているのかを明らかにする.