抄録
1.研究の背景と目的
21 世紀に入ってから,中国の経済発展に伴って中国人の年間収入は倍増し,多くの人が観光活動に親しむようになった.さらに,平和的な国際環境と国々の関係の改善によって,国際観光活動が以前より活発化してきた.その中で、2017年までに中国人のアウトバウンド観光客数が1.3億人を越え,人気のある観光地としてタイ,日本,ベトナムの三つの国がランキングされた.同年には中国人観光客が訪日外国人の約25%を占めることが分かった.
訪日中国人観光客における研究では,主に特定な観光現象や具体的な観光空間などが固定的に語られてきた.そして,全体的な観光空間についても指摘されてきたが,直近10年間の現状及び訪日中国人の農村観光活動については言及されてない.特に,直近10年間の中国人に向けたビザ政策の変化や訪日中国人の構成変化などの要因を重視し,日本に来た中国人観光客の旅行特性に目を向ける必要がある.
そこで,本報告では,まず最新データを利用して,直近10年間の訪日中国人の観光意識の変化と観光先の拡大を順次把握する.次に,観光先の拡大の中で,中国人観光客の白川郷人気の上昇プロセスを解明する.最後には,日本国内で農村観光をする訪日中国人観光客の属性と特別性を明らかにする.
2.結果
近年の訪日中国人の観光意識および訪問地の変化(空間的な移動)について,「観光空間」と「旅行特性」という2つの概念に依拠しながら考察した.特に直近10年間における,訪日中国人観光客の観光空間の変化として,観光地の選択が大都市から農村へ移行したことが分かった.中国人観光客の観光空間の変化は,最初,東京,大阪など,主に日本の国内有名な国際都市が中心であったが.現在の段階では,国際都市以外の主要都市が中心であり,各地域の中核都市をハブのように用い,観光空間を面的に拡大していることがわかった(点的→線的→面的).
そして,中国で人気的な農村観光地としての一つである白川村を分析すると,「中国人」観光客の「白川郷」人気の上昇プロセスを解明した.まず,白川村が地理的に特別な場所にあり,日本中部の広域観光の範囲内における中心に位置しており,アクセスの良さが指摘できた.そして,白川村は,日本でも早い時期に文化遺産として登録されている地域の一つであり,日本だけでなく,国際的も高く評価されているという知名度の高さが指摘できた.最後に,インターネット上に作られる仮想的な空間と現実的な場所空間の相互作用が指摘できた.
更に,一般的な訪日中国人観光客と比較すると,農村地域で観光活動を主に行っている中国人観光客の年齢は,特に20代後半から30代前半に集中しており,若い年齢層であることがわかった.これより農村を訪れる中国人観光客たちは,以前からある「団体型」の観光客に比べて,柔軟性や観光活動における行動力があるといえる.
以上より,直近10年の中国人観光客の観光空間の進出方向や農村観光する中国人の属性を把握できると考える.
3.今後の考察
本報告の結果に基づき,近年の訪日中国人の観光空間の変化と進出方向および観光客の属性を考察すれば,中国国内の特定階層の人たちに狙いを定めた,区別された観光商品を出すことができるようになると考える.それは,訪日中国人の観光活動がさらにMarket Segmentationすることを意味するだろう.