日本地理学会発表要旨集
2019年度日本地理学会春季学術大会
セッションID: S409
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発表要旨
徳島県におけるサテライトオフィス誘致と地域活性化(3)
-大学サテライトオフィスの役割-
*藤田 和史
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抄録

I はじめに

 「とくしまサテライトオフィスプロジェクト」は「とくしま集落再生プロジェクト」の一環として,2011年度より開始された.2018年12月末現在で,サテライトオフィスの立地件数は62社を数える.それに伴って,一定程度の移住者,地元雇用が生じている.

それら企業のサテライトオフィスとともに,徳島県内に立地する大学のサテライトオフィスが県内各地に展開している.本報告では,小田(成蹊大),遠藤(敬愛大)との共同調査のうち,美波町への大学サテライトオフィスの立地と,それらの活動による地域活性化への寄与にについて報告する.



II 大学の地域連携とその展開

大学の地域連携は,1980年代後半に始まった.80年代から90年代の地域連携は,産学連携が先行した.全国の地方国立大学には,産学連携拠点や技術移転組織が設置された.90年代に入り,生涯学習需要の昂進に伴い,生涯学習拠点が全国の大学・短大に整備された.ただ,これらの施設・組織の多くは,既設の大学キャンパス内への設置にとどまっていた.

大学のサテライトキャンパス設置の動きが始まったのは,2000年前後である.その契機となったのは,2005年に発表された平成17年中教審答申『我が国の高等教育の将来像』である.その中に,大学の第三の使命として「社会貢献」が記載された.また,2006年には教育基本法が改正され,第7条に大学の社会貢献が明記された.これらに基づき,大学は業務としてより積極的に地域連携・産学連携を進める必要が生じた.

上記の制度的な変遷とともに,大学は政策的にも地域連携を進める必要が生じた.とくに2012年から開始された「地(知)の拠点整備事業」(以下,COC事業)である.COC事業は,地域再生の核となる大学を目指し,地域課題の解決を地元自治体・企業との協同で取り組むことが目的とされた.COC事業は,2015年に安倍政権の地方創生推進事業と呼応する形で「地(知)の拠点大学による地方創生推進事業」(以下,COC+)へと改められた.従前の事業との差異は,大学が地元自治体・企業と協同して地方創生へと積極的に関与し,地域が求める人材を育成し,地元へ定着させることが求められた.

以上のように,各大学はそれぞれの事情に基づいて,学内外の地域連携拠点の整備を進めてきた.とりわけ,地方大学においては,上記の政策の後押しから立地道府県への連携拠点整備が活発に行われ,多数のサテライトオフィスが設置されている.



III 美波町への大学サテライト立地と活動

 美波町には,2018年現在,徳島大学,四国大学,徳島文理大学,神戸学院大学の4大学のサテライトが立地し,活動している.

 徳島大学は,「地域づくりセンター」として,美波町役場由岐庁舎に拠点を構え,美波町の「持続的なまちづくり」をテーマとした活動を2013年から開始している.サテライトオフィスには連携コーディネーター(以下,CD)1名が駐在し,防災・地域振興などの事業を実施している.なかでも,地域防災組織による「まったりカフェみなみ」の活動支援が特筆される.

 四国大学は,「南部地区スーパーサテライトオフィス」として,徳島県南部総合県民局庁舎の一角に拠点を構え,COC事業指定を受けた2014年から活動を開始している.サテライトにはCDが2名駐在し,道の駅との商品開発などの事業を展開している.

 徳島文理大学は薬王寺門前町の桜町商店街に,神戸学院大学はミナミマリンラボに拠点を構え,多様な活動を展開している.

 シンポジウムでは,大学の活動を紹介しつつ,地域活性化への大学サテライトの寄与,果たす役割等を議論したい.

本研究はJSPS科研費16K03201の助成を受けたものです.

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