主催: 公益社団法人 日本地理学会
会議名: 2020年度日本地理学会秋季学術大会
開催日: 2020/10/10 - 2020/11/22
1940年以前の田沢湖のpHは6.7であり,固有種・クニマスをはじめとした水産資源が得られる貴重な水域であった。しかし,戦時下の国策として日本有数の農業地域である仙北平野への農業用水の確保や電力開発への開発のために, pH 1.2の温泉水が玉川源流部にあたる玉川の水を田沢湖への導水させたことにより,湖水はpH 4.6まで低下したとされる。このように水文環境が,元来,湖への入ることなかった河川水の導水事業などがおこなわれたことに起因して,湖水は酸性化しクニマスをはじめ多くの生物が絶滅し,明治期から現在までに水文環境や生態系が大きく変貌した。1991年4月には玉川中和処理施設の稼働し,処理された河川水が田沢湖に導水され,湖心表層のpHも5.8程度まで回復した。しかしながら,現在は5.3程度となっている。また,湖底付近のpHは5.1程度と表層より低い値となっており,現在も改善していないのが現状である。加えて,田沢湖の現在の鉛直循環機構にも不明瞭な点が多く,長期的・連続的な水温や水質の測定が不十分である。本研究では,田沢湖における水収支や水質改善について考察する。