日本地理学会発表要旨集
2020年度日本地理学会秋季学術大会
セッションID: P152
会議情報

発表要旨
インドにおける新型コロナウイルス(COVID-19)感染の空間的特徴
*勝又 悠太朗月森 義基
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

1研究背景と目的

 世界各地で感染が拡大する新型コロナウイルス(COVID-19)は,社会・経済・文化など多方面にさまざまな影響を及ぼしている。本研究は,インドにおけるCOVID-19感染の空間的特徴について,GISを用いた地図化を通じて検討することを目的とする。本研究では,州(State)別に加え,より詳細な地理的スケールである県(District)別での分析を行う。また,それらの時系列変化を追うことで,インドにおけるCOVID-19感染の地域的傾向を捉えていく。なお,県は州の下位に位置付けられる行政単位である。

2.使用データ

 分析に用いるデータは,covid19india.orgが収集整理・公表しているものである。同組織は,ボランティアのグループであり,公的な組織ではないものの,州の報道や公式情報などをもとにデータの収集整理・更新を行っている。ウェブサイト上で情報を発信するとともに,収集整理したデータをAPIドキュメントとCSVファイルの形式で公表しており,それをダウンロードして使用することができる。使用できるデータの種類には,時系列,州別,県別などに集計されたものと,集計前の元データがある。また,公表データは,随時最新の情報が追加されるなど,更新されている。これらのデータは,複数の情報源をもとに収集されたものではあるものの,県という州よりも詳細な地理的スケールでの分析を時系列的に可能であるという点で,地理学的な分析を進める上で有用なものであると考える。

 加えて,人口などの分析に用いるその他のデータは,現時点で最新となる2011年のインド国勢調査の数値を使用する。

3.インドにおけるCOVID-19感染の概要

 インドにおけるCOVID-19の感染者数の推移をみると,特に2020年5月以降,感染者の増加が顕著に確認されるようになった。5月初頭時点の累計感染者数は,5万人に満たなかったが,6月の第1週目には約25万人に達した。その後,感染者の増加ペースはさらに上がり,7月初頭には60万人を超えた。そして,7月25日現在の累計感染者数は,138.7万人であり,人口1万人あたりの感染者数は11.5人となる。

4COVID-19感染の地域的特徴

 2020年7月25日現在の累計感染者数を州別にみると,ムンバイを擁するマハーラーシュトラ州が最多であり,これにチェンナイを擁するタミル・ナードゥ州,デリー,バンガロールを擁するカルナータカ州と続く。このように,インドにおいても,感染は大都市を中心に拡大したことが示唆される。しかし,デリーにおける新規感染者数は,6月末以降大きく減少する一方,7月に入り感染者数が大幅に増加した州もあるなど,感染の地域的傾向にも変化が確認される。

発表当日は,州別だけでなく県別のデータを用いた分析結果を示すとともに,その後の感染状況も踏まえた検討を行っていく予定である。

著者関連情報
© 2020 公益社団法人 日本地理学会
前の記事 次の記事
feedback
Top