主催: 公益社団法人 日本地理学会
会議名: 2020年度日本地理学会春季学術大会
開催日: 2020/03/27 - 2020/03/29
近年,豪雨災害による被害が日本各地で発生している.2019年には台風19号(Hagibis:ハギビス)により東京都と神奈川県の県境でもある多摩川が田園調布(上)観測所において氾濫危険水位(8.4 m)を超え,最大で10.77 mまで上昇し,東京都側では二子玉川,神奈川県側では溝の口や武蔵小杉では被害が生じた.また,神奈川県の相模川では城山ダムが建設以来,初めて緊急放流を行い、下流域での被害が懸念された.相模川の下流域は深刻な樹林化が生じており,緊急放流によりこれらの樹木が下流域〜海域に流出することが懸念された.このように災害時には河川氾濫やダムの緊急放流などに注目が集まるが,平野部湖沼においても同様のリスクが存在する.
千葉県柏市と我孫子市に位置する手賀沼は,利根川水系の一部をなす,水深の浅い湖沼である.千葉県柏市と我孫子市に流域を持ち,大堀川と大津川河口付近が主な流入河川である.これらの河川の河口部では樹林化が進行し,広半な面積が埋積され陸地になっているが、自然環境保全基礎調査ではヨシ帯になっており,千葉県はこの部分をこの部分を陸ではなく水域とみなしている.川からの流れを遮る位置に陸地が広がっていることから,豪雨時に河口の上流不での氾濫をもたらす可能性がある.本研究ではこの区域を対象に,樹林化に伴ってできた陸地の冠水可能性などを検討した.
手賀沼の西側に流入する大堀川の河口部ではヨシ原が成長・枯死を繰り返し,最大で150cm以上も堆積していた.河口部での陸地化は河川の通水阻害を発生させ,その上流部で氾濫を発生させる可能性がある.手賀沼は豪雨時には水を一時的に貯留させる機能も有することから,早急に陸地化の対策および改善を計り元の湖岸線(現在のコンクリート護岸)まで水域を回復させることが重要である.