日本地理学会発表要旨集
2020年度日本地理学会春季学術大会
セッションID: S505
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発表要旨
福島県本宮市における令和元年台風19号被災地域の商店再開状況
*初澤 敏生
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抄録

1.本報告の目的

2019年10月12-13日にかけて、福島県内は多くの地域で台風19号による水害の被害を受けた。しかし、その被害の状況や影響は地域によって大きく異なる。本報告では福島県中通り地域(阿武隈川流域)の本宮市を例に、その被害の状況を報告する。本宮市は中心商店街が被災し、その復興が大きな課題となっている。本報告では報告者による調査も踏まえて状況を紹介したい。

2.調査の概要

本宮市では台風19号により7名の死者を出している。中心市街地の多くが浸水し、平屋住宅に住む高齢者が避難できないまま溺死する事例も見られた。現段階で把握されている建物被害は全壊249軒、大規模半壊184軒、半壊395軒となっている。

報告者は本宮市の被害状況を把握するため、10月15日、11月16日、12月14日、1月17日の4回にわたり、現地調査を行った。特に11月と12月、1月の調査では、商店の再開状況を調査した。調査地域は中心商店街を構成する7地区で、これらの地区は全域が浸水している。特に安達太良川の北側の地域は浸水の度合いが大きく、既に取り壊されている家屋もある。

 商店の地区別再開状況を実地調査により把握した。再開率(全体の平均)は11月調査の段階で37%にとどまっていたが、12月調査では61%、1月調査では63%に上昇している。しかし安達太良川北岸の3地区では再開率が低く、中でも旧街道沿いの地区では再開率は28%にとどまる。

 休業店舗の特性をとらえる上では立地上の考察が有効である。例えば、メインストリート南部で休業中の店舗は、多くがその中でも最南部のところに立地している。また、メインストリート北部では、休業中の店舗は逆に最北部のところが多い。これを1986年8月5日の水害時の浸水実績図と重ねると、当時の浸水地域として示されているところで今回の水害でも長期休業に追い込まれている店が多いことが認められる。水害に会いやすい地点に立地している店舗が今回の水害でも甚大な被害を受けているのである。安達太良川北部地域の甚大な被害も、同様に説明できる。

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