本報告は、現代韓国社会において、以前は「迷信」とされた風水思想が、どのように評価され受容されているかについて探究するものである。ここでは、その一環として、朝鮮半島の北部にある白頭山から半島南部の智異山に至る山の連なり(稜線・尾根線)を「気」と「脈」の論理で示す「白頭大幹」概念の現代的評価について検討した。
韓国における「白頭大幹保護に関する法律」などにみる「白頭大幹」の評価は、伝統的な地理思想の一端が積極的に評価されたとも言えるだろう。その際には、「固有の」伝統文化と、伝統的知識を用いた環境認識という二つの評価軸が存在するように思われる。現在も「白頭大幹」に代表される、「脈」による山々の連なりの把握手法は、今後も地理教育や国土開発に向けた「標準山チュルギ(山の連なり)」の設定などを通じ、活かされてゆく可能性がある。