日本地理学会発表要旨集
2020年度日本地理学会春季学術大会
セッションID: 404
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発表要旨
東京都心周辺部におけるジェントリフィケーション
*藤塚 吉浩
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抄録

東京都中央区のCBD近くには、漸移地帯の特徴である卸売業の店舗や軽工業の工場が集積していた。1980年代後半から1990年代初めにかけての地価高騰期には、住宅を兼ねていたものの多くは投機的に買収されて、立ち退きとなった。1990年代半ば以降、急激に地価が下落すると、立ち退きされたところの多くは、空閑地や空き家や駐車場となった。これらの低・未利用地を再利用させるために、2002年に公布された都市再生特別措置法のもとで都市再生緊急整備地域が導入され、規制緩和の実施により、超高層共同住宅が多数建てられた。これらを起因として、2000年代前半には中央区においてジェントリフィケーションが発現した。

 CBDから離れた港区白金では、古川沿いに低廉な地価を立地条件とした小工場が集積していた。地価高騰期をすぎた1990年代半ばまでは、多くの小工場が残っていた。2000年代になると、これらの住宅を兼ねた工場の多くが立ち退きとなり、超高層共同住宅を含む多くの民間共同住宅が建てられて、ジェントリフィケーションが起こった。建設された超高層共同住宅の高価な住戸には、外国人の来住もあり、グローバリゼーションの影響が看取された。

 20階建以上の超高層共同住宅は、東京では湾岸地域と都心・副都心を含む中央区、港区、江東区、新宿区に多い。本研究においてジェントリフィケーションの指標とする、専門・技術,管理職就業者数の2010年から2015年までの90人以上の増加は、中央区、港区、新宿区ではなく、CBDから離れた文京区や豊島区、荒川区、墨田区に多い。これらの区には木造住宅密集地域が含まれ、ブルーカラーの割合が高く、インナーシティとしての特徴がある。

 2000年代には工場を兼ねた住宅の跡地である低・未利用地の存在が、ジェントリフィケーションの起因となったが、この傾向は2010年代以降の都心周辺部においても続くのであろうか。本研究では、都心周辺部のどのような地域において起こったのか、またその起因は何なのか、さらに地域には影響がみられるのかについて、現地調査の結果をもとに明らかにする。

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