高校地理教育において,水害をどのように扱ってきたか紹介する。水害は地形との関係が深いことから,地形の学習のまとめという位置づけで行ってきた。こうした授業が可能になった背景の一つに,地理院地図などWeb GISの発展がある。あわせて授業内の巡検を実施することを通じて,教室での学習内容を実際に自分の目で見て確認することも重視してきた。
今回の台風19号では,荒川支流の越辺川・都幾川の堤防が決壊し,大きな被害が発生した。現在勤務する埼玉県立坂戸西高等学校では直接的な被害はなかったものの,堰の破損や河川敷の洗堀などの被害があった。台風通過後,直ちに生徒とともに被害状況を視察した。また,埼玉県高等学校社会科教育研究会地理部会では,昨年末に越辺川・都幾川の決壊現場等を視察する巡検を企画し,多くの参加者を得た。
水害などの災害を授業で扱うことの意義は,生徒が自らの命を守るために合理的に判断し,行動できるようになることにある。新たな知見を生徒に伝えられるよう,われわれの自身の研鑽も欠かせない。