日本地理学会発表要旨集
2020年度日本地理学会春季学術大会
セッションID: P179
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発表要旨
日本付近における冬季低気圧経路の気候学的特徴
*室井 和弘赤坂 郁美
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抄録

1.はじめに

 冬季の日本では、季節風による天候が卓越する一方で、低気圧による降水も見られる。Chen et al.(1991)などによって、冬季の日本付近は低気圧活動が活発であることが明らかになっている。また、Adachi and Kimura(2007)によると、冬季の日本付近を通過する低気圧には主要な経路として、本州南岸を通過する経路、日本海を通過する経路、中国大陸から日本の北を通過する経路の3種類が存在している。低気圧の通過による日本の天候への影響は、低気圧の通過経路によって異なるため、通過経路ごとの季節性や年々変動を明らかにすることは、冬季の日本の天候を把握する上で重要である。そこで本研究では、冬季に日本付近を通過する低気圧の経路分類を行い、経路ごとの通過頻度と年々変動を明らかにすることを目的とする。

2.使用データと解析方法

 1981年12月〜2016年2月の冬季3ヶ月を対象に、気象庁アジア太平洋地上天気図(UTC0時・12時)を用いて日本付近に前線を伴って出現した低気圧を抽出した。12時間おきに低気圧の中心位置を緯度経度1˚×1˚グリッドで決定し、直線で結ぶことで低気圧の通過経路を特定した。特定された低気圧経路は、通過領域ごとに経路分類を行い、各年の低気圧経路の通過頻度を明らかにした。

 

3.結果と考察

 低気圧の高頻度域は、本州の南岸、関東の東沖、日本海中部から北部に見られる(図1)。これは、Adachi and Kimura(2007)などと同様の結果であり、本州の南岸を通過する低気圧と日本海を通過する低気圧に対応する領域に高頻度域が示されたと言える。次に、図1を基に低気圧経路を分類した結果を示す。主要な経路が4種類あり、本州南岸を沿うように通過する経路(『南岸』)、日本海を通過する経路(『日本海』)、中国大陸上に出現し日本の北を通過する経路(『大陸』)、140̊E以東の海上に出現する経路(『東沖』)が見られた。

対象期間における低気圧出現数の平均値は約31.8個であった。1991年が最も多く53個、2013年が最も少なく21個であった。1991年をピークに出現数は減少傾向にあり、2000年代後半にかけてこの傾向が持続していた。近年は、ほぼ横ばいである。

経路別では、対象期間における通過頻度の割合が最も高かったのは『南岸』で約35.2%であった。次いで『東沖』が約21.3%、『日本海』が約18.8%、『大陸』が約14.1%となった。また、『南岸』を除いた3種類の経路で、1990年代以降に通過頻度が減少していることが分かった。『南岸』には、1980年代に減少傾向が見られたが、1990年代以降では明瞭な減少傾向は見られなかった。

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