日本地理学会発表要旨集
2021年度日本地理学会秋季学術大会
セッションID: P020
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発表要旨
インドにおける新型コロナウイルス(COVID-19)感染の空間的特徴(第2報)
*勝又 悠太朗堀本 一樹赤井 理子
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抄録

1研究目的

 本発表は,インドにおける新型コロナウイルス(COVID-19)感染の地域的特徴をGISによる地図化を通じて明らかにすることを目的とする。発表者は,2020年のCOVID-19感染の地域的特徴に関する分析結果を既に発表しており,本発表はその続報に位置づけられる。今回は2021年1〜6月を主たる分析対象期間とし,特にこの期間中に発生した感染の第2波の動向に注目する。

2.使用データ

 分析には,covid19india.orgが収集・整理し,ウェブサイトで公開しているデータを使用する。同組織は,公的な組織ではないが,国や州などが発表する情報を中心に収集・整理を行っている。使用できるデータには,インド全体のデータに加え,州別,県別に集計された地理情報を含んだ時系列データも含まれる。

3.インドにおけるCOVID-19感染の動向

 インドにおいてCOVID-19の感染が初めて報告された2020年1月30日以降の新規感染者数の動向を月別に確認する。2020年4月までの新規感染者数は34,867人,5月は155,781人,6月は395,044人,7月は1,111,273人,8月は1,990,350人,9月は2,622,322人,10月1,873,041人と推移し,9月をピークとする感染の第1波が確認された。その後,11月は1,279,861人,12月は823,056人,2021年1月は472,317人,2月は353,427人と新規感染者数は大幅な減少に転じた。しかし,3月になると1,108,656人と1ヵ月の新規感染者数が再び10万人を超え,4月は6,936,345人,5月には9,016,687人と感染者が急増した。6月の新規感染者数は2,236,883人となっており,4〜5月にかけて感染の第2波が訪れたことがわかる。7月3日時点の累計感染者数は30,544,009人に達しており,これはアメリカに次いで世界第2位の人数である(日本経済新聞社の新型コロナウイルス感染世界マップによる)。

4COVID-19感染の地域的特徴

 2021年1月以降のCOVID-19感染の動向を州別にみていく。新規感染者数が減少傾向にあった1月と2月は,いずれもケーララで最多の感染者数が報告された。これに次ぐのがマハーラーシュトラであり,2月には両州で全感染者数の73%を占めた。3月になると新規感染者数が増加に転じたが,州別にみるとマハーラーシュトラが657,910人(全国比59%)と圧倒的に多く,第2位のケーララ(65,181人)の10倍近い感染者が報告された。感染の第2波が始まった4月もマハーラーシュトラで最多の新規感染者(1,789,492人,全国比26%)が発生した。これに,ウッタル・プラデーシュ,カルナータカ,デリー,ケーララが続いたが,全国比が10%を超えた州はマハーラーシュトラのみであった。第2波のピークを迎えた5月は,マハーラーシュトラで最多の感染者数を記録した点は同様であるが,カルナータカ,ケーララ,タミル・ナードゥも全国比が10%を超えており,インド西部〜南部を中心に感染が拡大した様子が伺える。そして,6月もこれら4州が新規感染者数の上位を占めたが,ケーララとタミル・ナードゥがマハーラーシュトラの感染者数を上回った点は5月とは異なる傾向であった。

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