日本地理学会発表要旨集
2021年度日本地理学会秋季学術大会
セッションID: P015
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発表要旨
D3.jsを用いた地図投影法学習教材の開発
*根元 裕樹夏目 宗幸
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抄録

はじめに

GISを学ぶ際に多くの人が直面する壁として、座標参照系が挙げられる。GISを単なる地図表示ツールとしてではなく、分析ツールとして役立たせるためには、分析に用いる地理情報の座標参照系の扱いは避けては通れない。その基礎となる考え方が地図投影法であると言える。地図投影法の考え方は、中学校や高校の授業で扱っているはずだが、筆者らが担当したGIS初心者のための授業では、受講者にこの考え方が十分身についているとは言えないことが実情である。田代(2011)によると、地理を専門とする教員にとっても地図投影法は敬遠されがちと指摘されており、中学校や高校で地図投影法に関する十分な学習ができていない可能性が示唆される。

GISの登場によって、より地図投影法の考え方を身につけることが重要である一方、GISを用いることによって、地図投影法について学びやすくなったとも言える。GISによって、様々な地図投影法の地図を手軽く作ることができるようになり、佐藤(2015)などのGISを用いた地図投影法学習教材も提案されている。2022年度より高校では『地理総合』にてGISを学ぶことになるため、GISを用いた地図投影法の学習もより重要になる。

ところで、手軽く使えるため、『地理総合』で多く利用されるであろうWebGISは、そのほとんどがWebメルカトルを座標参照系として用いている。Webメルカトル以外の座標参照系を用いているWebGISは数少なく、手軽く使えるWebGISに地図投影法の教材として使えるものは少ない。そこで、筆者らは、Webメルカトル以外の座標参照系も用いることができる地図エンジンとして、D3.jsに着目した。D3.jsは、厳密には地図エンジンではなく、地図以外も含めた様々な図形を生成できるjavascriptのライブラリである。本研究では、D3.jsを用いて、Webメルカトル以外の座標参照系を利用できるWebGISを開発し、地図投影法の学習教材として使えるようにした。

研究方法

本研究では、javascriptライブラリのD3.jsを用いて、地図投影法の学習を支援できるようなWebGISを作成した。

対象とする範囲は、地球全体とし、世界地図のWebGISとして用いる。WebGIS上の世界地図が選択した任意の地図投影法によって、どのような形になるのかを確認できるようにした。

対象の地図投影法は、正距方位図法、正積円錐図法、メルカトル図法である。これらは、D3.jsで表現できる地図投影法のうち、距離、方位、面積、角度が正しいものをそれぞれ選択した。

D3.jsを用いた地図投影法学習教材の開発

D3.jsの機能を用いて、対象の地図投影法から任意の地図投影法を選んで、ボタンを押下することによって、WebGISの地図投影法を変更できるようにした。

地図投影法の学習のためには、地球上の任意の地点がそれぞれの地図投影法によって、どのように見え方が変わるのか、がわかる必要がある。開発したシステムでは、利用者が選択した任意の地点がそれぞれの図法でどこに位置するのかを確認できるようにした。

おわりに

本研究では、javascriptライブラリのD3.jsを用いて、地図投影法の学習を支援する教材となるWebGISを開発した。本システムでは、複数の地図投影法を切り替えることができることによって、立体の地球を平面の地図に変換したときに、様々な歪みができるという地図投影法の概念をGISを使ってわかりやすく伝える手助けができるのではないかと期待される。

謝辞

本研究は、JSPS科研費20K13992の助成を受けたものです。ここに記して御礼申し上げます。

参考文献

佐藤崇徳 2015. コンピューターを利用した地図投影法学習教材の作成および公開. 地学雑誌 124(1): 137-146.

田代 博 2011. 地図投影法をめぐる問題—学校教育,一般社会での世界地図(投影法)の扱い. 地図中心 460: 6-9.

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© 2021 公益社団法人 日本地理学会
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