主催: 公益社団法人 日本地理学会
会議名: 2021年度日本地理学会春季学術大会
開催日: 2021/03/26 - 2021/03/28
1.はじめに
2022年から高校地理歴史科において「地理総合」が必履修科目となり、そこではGISの利用が内容に盛り込まれている。2017年に行ったGIS利用に関する調査では、高校でのGIS利用率と23.9%と普及は十分でなかった(谷・斉藤2019)。しかし、地理院地図や今昔マップ等の地図を閲覧する簡便なWebGISの普及や、ここ数年の高校での情報機器の普及状況を考えると、地理総合でのGISの利用はそれほど難しくないと思われる。
閲覧を中心とした簡便なWebGISの利用が中心になると考えられるが、統計データなどを地図化するGISもある程度利用されると考えられる。しかし、そうしたGISであるMANDARA10(谷 2018)などは、デスクトップGISでインストール作業が必要であり、OSによっては導入できない。また既存のWebGISでは、処理速度や通信速度の問題がある。そこで筆者は、Webブラウザ上で動作しつつも、インターネット接続は必要とせず、ブラウザ内部でデータを処理する、「ブラウザGIS」の開発を行った。
2.開発プロセス
一般にWebGISでは、データとデータを処理するプログラムをサーバ上に置き、地図の描画をWebブラウザで行っている。一方本研究の「ブラウザGIS」では、データの処理もWebブラウザ上で行い、サーバとの接続は最初の読み込み時に限られる。
Google Chrome等のWebブラウザでは、JavaScript言語でユーザ自身のプログラムを動作させることができる。JavaScript言語とHTML5の規格に基づけば、大部分のWebブラウザで共通した動作が可能である。GISでは必須となるグラフィックスについても、HTML5のCANVAS APIを使うことで、デスクトップGISと同様の地図描画が可能となった。
開発の目標として、筆者開発のWindows上で動作するGISソフトMANDARA10の機能のうち、主題図表示機能を実装することとした。MANDARA10は、Microsoft Visual Basic .NETで開発しており、そのコードをJavaScriptに移植していく。しかし、両者にはほとんど互換性がないため、大部分書き換える必要がある。JavaScriptおよびHTMLの開発は、2019年3月からMicrosoft Visual Studio Codeで行い、2020年4月16日に試作版を公開(http://ktgis.net/mdrjs/)、現在は試作版バージョン0.003で、機能の追加を続けている。
3.操作
図は操作画面であり、WebブラウザFirefox内で動作しているところである。デスクトップGISのMANDARA10とほぼ同じ画面構成で、同じ要領で操作できる。ただしMANDARA JS単体では、MANDARA10のマップエディタが含まれないなど機能は完全ではない。インストール不要でOSに関わらず使えるGISとして、高校地理教育や大学生のレポート作成などの用途に適している。
文 献
谷 謙二 2018.『フリーGISソフトMANDARA10パーフェクトマスター』古今書院.
谷 謙二・斎藤 敦 2019 .アンケート調査からみた全国の高等学校におけるGIS利用の現状と課題−「地理総合」の実施に向けて.地理学評論:92A,1-22.
本研究に際しては科研費17K01225を使用した。